立ち止まらず、誰よりも早く進み続ける

儲けすぎないほうが「儲かる理由」
高橋誠一(たかはし・せいいち)
三光ソフランホールディングス株式会社 代表取締役社長
1945年、大宮市(現さいたま市)生まれ。東京電機大学電気工学科卒業。1974年に三光不動産株式会社(現三光ソフランホールディングス)設立、代表取締役社長就任。現在、三光ソフラン(株)代表取締役会長、メディカル・ケア・サービス(株)代表取締役会長、(株)財産ドック代表取締役社長、全国賃貸管理ビジネス協会会長、(財)日本賃貸住宅管理協会副会長など、様々な役職を兼任。2004年に、不動産事業の振興に多大な貢献をし、関係団体の役員として業界の発展に寄与したとして、「国土交通大臣表彰」受賞。2006年には、建設・不動産・賃貸管理・介護事業の功績により、「黄綬褒章」を受章。さらに2016年には、「旭日双光章」を受章。

山下:高橋会長は、「これは面白い、これは面白い」と、ビジネスを次々と立ち上げられていますし、仕事を楽しんでいらっしゃいますよね。その源泉は、何でしょうか。

高橋:あまり考えたことはないですけど、今までやったことがない事業をはじめるときは、苦労が多い分、楽しさもあります。

2000年に、はじめて新規事業を自分で考えたときの話をしましょうか。1998年に、「これからは賃貸管理業だけでは伸び悩むだろう」との思いもあり、少子高齢化を踏まえて、介護事業への参入を考えました。介護保険が導入されるし、チャンスかもしれないと思ってグループホームに照準を絞ったんです。そして、今までのように「成功者の真似しよう」と思ったら、当時は介護事業で結果を出している人がいなかったんですね(笑)。真似ができない以上、自分で考えるしかない。

全部想像で計算して、2001年に1棟目を開設しました。3年目までは1棟ずつ増やしていき、その頃にはノウハウが蓄積できたので、2004年に一気に31棟に増やしました。

ところが入居者が全然入らず(笑)、「潰れるかも」という状況に陥ってしまったんです。ヘルパーを750人も雇っていたので、毎月1億円ずつ給料を払わなきゃならない。半年後、「もう、これ以上のお金がない」というギリギリのところで、少しずつ入居者が増えてきました。正直な話、ほっとしましたね。2017年には300棟を超えて、日本一になりました。

山下:本当の意味で「仕事を趣味」にされているのがよくわかります。優秀な幹部がたくさんいらっしゃるにもかかわらず、ご自身が率先して仕事をしていますし。

高橋:「これ以上忙しくする必要はないじゃないですか」とまわりが言うのだけれど、ダメなんですよね、止まっているのは。だから、ついチャレンジしたくなる。あとからついてくる社員たちは大変かもしれませんけど(笑)。

ビジネスを継続させる極意

山下:私が取締役を務める株式会社アースホールディングスは、今年で創業32年目に入りました。「100年続く会社にしたい」と考えておりますが、ビジネスを継続させるのは、本当に難しいと痛感しています。

高橋:「企業の寿命は30年」とよく言われていますよね。会社を興して30年経ったなら、それまでのやり方を革新していかないと、会社は行き詰まってしまう。老舗がここへ来てどんどん潰れているのは、やはり昔の名前に頼り過ぎて、新しいことを何もしてこなかった結果ではないかと思います。

山下:過去の栄光にすがっていてはいけない、ということですね。

高橋:そうですね。過去は過去できちんとした実績です。しかし、お客様が求めているものは30年の間に確実に変化している。お客様が欲しがっていないものをつくり続けても、売れない。

「今、お客様が望んでいるもの」を提供できているのかどうか。そこを徹底的に考えることが大切です。結局のところ、時代によって変わっていく趣向に合わせて、自分や自社を変えていくしかない。過去と同じ方法にいつまでも固執していたら、お客様はいなくなってしまいます。

(第6回に続く)