ストーリー編[After]
ビデオ会議では、会議の意義とルールが一変した

どうして、あんなに「会議」ばかりやっていたんだろう?	Photo: Adobe Stock

 入社3年目の吉野淳は、以前よりもストレスが減っていることに気づいた。定期的に開かれていた「意味がないと思える会議」が見直され、情報共有のされ方にも変化が起きたからだ。

 そもそも、全員がそろって会議に集まれることもなくなった。在宅勤務やテレワークを選ぶ社員が増え、会議のベースもビデオ通話に切り替えられた。

(先輩の居眠り謎スキルもこれまでか……)

 と、吉野は心のなかで、かすかな安堵をおぼえていた。

 さらに、ビデオ会議で全員の顔が映し出されていると、明らかに「発言していないこと」や「集中できていないこと」がわかりやすい。

 そのうち、情報共有だけならば事前に資料を提出すること、基本的に会議に参加するのは議長から招集された人だけにすることなど、より良いビデオ会議にすべく工夫が重ねられていった。

 吉野にも会議の参加要請が来るのは、「現場から見た意見がほしい」という求めに応じることが多いからだ。「自分が求められている」とはっきり感じられるだけに、これまでよりずっとやる気が湧いていた。

(自分にとってもチャンスだし、これなら1時間じゃなくて、2時間でも、もっとでも話していたいくらいだよ……!)

 これまで議事録づくりを任せられていた後輩も、自動の議事録機能や、録画での振り返りなどができることで、発言をする余裕ができたようだ。その意見が鋭いことも多く、吉野は焦りを感じてもいる。これまでの形だけの「先輩」は、もう武器としては通じないのだ。