太り過ぎがまずかったとCOVID-19体験を振り返ったボリス・ジョンソン英首相。
もちろん体重のみで重症化するわけではないが、大きな危険因子であることは事実。もはやダイエットは個人レベルを超えた「公衆衛生問題」なのだ。
あらゆるダイエット法の中で、最近の流行は「断食法」だ。大ざっぱにわけると、断続的断食と好きなように食べる「チートデー」の組み合わせ、週末断食(5:2法)、そして1日の食事時間を制限する「TRF」などがある。
TRFは1日のうち食事ができる時間を、4時間(4/20)、もしくは6時間(6/18)に制限し、それ以外の時間帯は水やノンカロリーのお茶のみが許される方法で、「食べてもよい」時間帯は、好きな物を好きなだけ食べられる。前者が20時間の、後者が18時間の「プチ断食」というわけ。
7月、米イリノイ大学の研究グループから、TRFの比較試験結果が報告された。
58人の参加者(平均年齢47歳、女性9割、体格指数35超)を「4時間TRF(食事時間は午後3~7時)」「6時間TRF(同午後1~7時)」「普段の生活」に割り振り、体重、血中脂質、インスリンに対する感受性、血圧など検査値の変化を10週間追跡。
その結果、両TRF群の1日のエネルギー摂取量は、約550キロカロリー減り、体重が約3%低下、インスリンの感受性と体内の炎症や酸化を反映する指標が明らかに改善したことが示された。
その一方で、脂質や血圧への影響は認められなかった。10週間程度では数値に反映されるほどの効果はなかったのだろう。また、制限時間の優劣はつかなかった。
このほか、TRFでは栄養の偏りが心配されるが、少なくとも本研究では炭水化物や甘い物に偏る傾向は認められていない。
TRFのメリットは、一度習慣化すれば、余計なことを考えずにカロリー制限を続けられる点だ。肥満とならびCOVID-19の主要な重症化リスクである2型糖尿病の改善も期待できる。
会食を制限されている今がTRFを始める良い機会かもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)