配当狙いでも、高い利回りだけで銘柄を選ぶのはNG。業績が悪化すれば、減配や無配転落の可能性があるからだ。では、中長期で高配当を享受でき、株価が値下がりしにくい銘柄はどうやって選べばいいのだろうか。厳しい条件を突破した「下値が堅い高配当株」を紹介する。(ダイヤモンド編集部 篭島裕亮)

「週刊ダイヤモンド」2020年9月12日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

「利回りの高さ」だけで選ぶのはNG
日産自動車やJTの教訓に学ぼう

 株式投資の利益には、値上がり益(キャピタルゲイン)と配当金(インカムゲイン)がある。日本企業も株主還元を重視するようになり、配当利回りの高い銘柄が増えてきたが、配当狙いでも「利回りの高さ」だけで選ぶのは避けた方がいい。高配当株の中には業績悪化により株価が低迷して、結果として配当利回りが上昇しているケースが少なくないからだ。

 これは日本を代表する大型株であっても変わらない。高配当株の代表格だった日産自動車と、現在も高配当株として個人投資家に人気が高いJTの2社に5年前に投資をしていた場合、同期間の日経平均株価は20%以上上昇したにもかかわらず、受取配当金の合計よりも株価下落による損失の方が多い。つまり投資成績はマイナスになっているのだ。

 日産の配当利回りは2019年初めに6%超まで上昇したが、これは業績の下方修正を織り込んで株価が下落した結果である。実際、日産は19年の3月と4月に2度の下方修正を発表して、19年度は連続増配が9期でストップ。6700億円の最終赤字予想の今期は無配に転落して、株価は2年半で3分の1程度まで下落した。

 JTは16期連続増配がストップしたとはいえ、現在も配当利回りは7%台中盤と高く、全銘柄の中でもトップクラス。だが、株価は国内外のたばこ販売の苦戦や、環境負荷などを重視するESG投資の世界的な流行が逆風となり、18年初から40%以上も下落した。また、減益にもかかわらず増配を続けたため、配当性向(=1株当たり配当金÷1株当たり利益)も96%まで上昇。来期以降は減配リスクもある。

 配当性向は利益のうちの何%を配当に回すかを表す指標。高配当株に投資をするのであれば、減配リスクを減らすためにも必ずチェックしよう。配当性向の上昇には限界があり、長期の増配継続には、業績が右肩上がりで成長する必要がある。

 この2社の教訓から学べることは、減益トレンドの高配当株への投資は危険ということだ。日産のように業績の低迷が続けば減配を余儀なくされ、さらに株価が大きく下落するリスクもある。

高配当と株価上昇を同時に狙える株は
3%台前半に多い

 では中長期で高配当を享受でき、株価が値下がりしにくい銘柄はどうやって選べばいいのだろうか。データ分析に詳しいクォンツ・リサーチの西村公佑代表取締役社長に、下値不安が少ない高配当株の選び方についてアドバイスをしてもらった。

「高配当株であっても、業績が右肩下がりではないことが大前提です。具体的には、直近8期のうち5期以上で増収、増益をしている企業の中から選びましょう」

 今期はコロナ禍のため、ある程度の減益は仕方がない。だが、アベノミクス以降、世界景気が拡大した8年間に増収、増益を達成したのが半数以下では、今後も右肩上がりの業績は期待しにくい。

 増配回数も条件に付けたのは、積極的に株主還元するスタンスであるかどうかを判断するためだ。利益が伸びた分、配当を着実に増やしていれば理想的である。

 西村氏のアドバイスを参考に作成したのが下表の「安定高配当株ランキング」だ。直近8期の実績をクリアした企業のうち、予想配当利回り2.7%以上、予想配当性向70%以下の企業を対象に、増益回数の多い順に配当利回りでランキングした。

「配当利回りが5~6%台の高配当株でも成長期待が低い企業より、配当利回りは3%台前半でも業績が伸びていて、増配も実施している企業の方が中長期では安心感があります。利益が増えれば株価の上昇も狙えるので、値上がり益と配当金を足した利益は多くなるはずです」(西村氏)

 では、安定高配当株ランキングの顔触れを見ていこう。「拡大画像」にはアナリストによる銘柄コメントも付けた。

 コロナ禍にもかかわらず、上位5社は直近8期全て増益で、さらに今期も増益予想の企業となった。1位の沖縄セルラー電話と4位の全国保証は直近8期全て増収、増益、増配。2社共に今期第1四半期も増収増益で、通期も増収、増益、増配を継続する見込みだ。

 3位の旭情報サービスはITシステム関連で、過去8期とも増収、増益を確保。今期の業績は横ばい圏だが、企業のITシステム投資が急減することは考えにくく、中長期で成長が期待できる。

 東証1部平均以上の配当をもらいつつ、株価の上昇も狙えるのが安定高配当株の魅力。頻繁に売買をせずに着実に資産形成を狙うなら、ぜひ注目してほしい。

【安定高配当株ランキングの見方】
対象は会社予想の配当を発表している上場銘柄。ただし業績変動が激しい銀行、証券、不動産セクターおよび、前期の営業利益が50%超減益、今期の予想営業利益が30%超減益の企業を除いた。その上で、下記の条件をクリアした企業を対象に、増益回数の多い順に配当利回りでランキングした。

<スクリーニングの条件>
●予想配当利回りが2.7%以上
●過去8期で増収が5回以上
●過去8期で増益が5回以上
●過去8期で増配が4回以上
●予想配当性向が70%以下

*HDはホールディングスの略。クォンツ・リサーチのデータを基にダイヤモンド編集部作成

Graphic: Daddy’s Home

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