経済学に革命を起こした「ナッシュ均衡」

 では、どのように「体系的に整理し直す」かを垣間見るために、ここで一つゲーム理論の基本用語「ナッシュ均衡」について説明しよう。

 ナッシュ均衡とは、「2人以上の意思決定問題」において何が起きるかの予測である。どのように予測するかを理解するために、まず、どんな意思決定問題でも-----1人での意思決定問題でも2人以上の意思決定問題でも-----意思決定者はまず予想を作って、それからそれに対して行動する、ということを思い出そう。そして、意思決定者たちは、意思決定問題を解き、各々の予想に対してベストな反応をしているはずである。

 そしてもう一つ、思い出してもらいたいことがある。それは、「2人以上の意思決定問題」においては、「予想」というのは「相手が何をするか」に対応する、ということだ。

 ということは、だ。「2人以上の意思決定問題」においては、各々の意思決定者は「相手が何をするか」に対してベストな反応をするということになる。そしてこれこそが、ナッシュ均衡の定義だ。ナッシュ均衡とは、各々の意思決定者が「相手が何をするか」に対してベストな反応をしている状態のことなのである。

 と、このように「ナッシュ均衡」の定義を与えられても、これのどこが偉いのか分かりづらいと思う。何やら子ども騙しのような定義だ。しかしこの概念は、経済学に革命を起こしたと言っていいほど画期的なものだったのだ。

 それは、一見して分析が難しそうな「2人以上の意思決定問題」に対してはっきりとした予測を与えるものだからだ。今やナッシュ均衡は、様々な市場分析、そして市場データの解釈に使われる。市場の外でも、政治、法、人間関係、など社会のあらゆる場面を分析する。でもどうやってそのような分析をするのだろうか? それを語るには本稿はもうスペースが足りないので、また、筆を改めることにしよう。