預金は増加し、預貸率低下
企業は資金を手元に置いている

 4月30日の補正予算の成立を受けて5月より開始された、信用保証協会の保証付きの無利子・無担保融資、通称“ゼロゼロ融資”を取り扱う預金取扱金融機関では、これらの資金繰り支援案件を巡る獲得競争がもたらされた一面が認められる。全国銀行協会加盟銀行の合計値でも、例年3月・4月に比べて数字が落ち込む5月・6月の融資残高の底上げ要因となった。

 その一方で、それ以上の伸びを示しているのが預金であり、結果として、今年度に入ってからの預貸率が低下傾向にある[図表9]。家計への支援を目的に実施された特別定額給付金が4月20日に閣議決定され、5月から順次給付された中で、相当額が貯蓄に回った事態がうかがえる。また、資金繰りへの不安を背景に、企業側が自己資金での投資や調達を抑制したり、融資を受けてもすぐに使わずに手元流動性を厚くしたりしている事態も見込まれる。

 カード・リース会社などのノンバンクについては、3月から6月にかけて前年同月比を上回る月間貸付金額・月末貸付残高を示しているものの、4月以降の件数は、前年を下回っている[図表10]。

 内訳では、一般の無担保・有担保の事業者向け融資ではなく、親子会社、系列先ならびに代理店への融資などの「その他営業貸付」だけが大きく金額を伸張させ、その他の減少分を補っている形だ。

 さらにその内訳を掘り下げれば、「その他営業貸付」も、件数自体がほぼ横ばいとなる中で、金額だけを大きく伸張させている。この背景に、比較的売買金額の大きい自動車産業に関連する貸し付け、例えば完成車メーカーから販売店(ディーラー)や部品メーカーへの低金利融資が、ファイナンス子会社を通じて実施された事態が見られる。

新政権に求められる
新たな消費喚起策

 預金取扱金融機関の融資は、通常、10~12月の第3四半期の取扱件数・金額が多くを占める。企業側が年末越えに不安を抱くのもこのためだ。需要や返済見込みのない企業にまで融資することによるモラルハザードや不良債権化は論外だが、マクロ的に捉えれば、既に各種の政策が相応に整備され、一定の利用も図られていると考えられるため、資金繰りに窮して年を越せないという企業ばかりではないだろう。

 したがって、より重要なのは、経済再生のために、官民一体で中小企業者や個人に安心感を与え、消費や投資を喚起する策だ。これから年末にかけて、お歳暮需要や忘年会、クリスマス商戦などの季節消費が見込める時期でもある。新政権にはGo To Eat以外にも、それを実現するための新たな施策が求められる。