PCR検査ではサイクル数を増やすごとに、より少ないウイルスでも陽性になる。

 理論的には、10サイクルだと、ウイルスが1000万個以上ないと陽性にならないが、20サイクルにすれば10万個以上で陽性になる。30サイクルでは1000個以上で陽性になり、40サイクルになると、わずか10個以上でも陽性になるのだ。

 新型コロナの場合、感染して発熱などの症状が出るには少なくとも10万個程度のウイルスが必要だから、感染しているかどうかの判定は20~25サイクルで検査するのが適切だと大橋氏は言う。

 ところが、日本の国立感染症研究所のマニュアルが示す「リアルタイムPCR」は45サイクルであり、国内メーカーの3つの検査キットでは40~45サイクルとなっている。

 これらを使ったPCR検査では、ウイルスが10個程度存在すれば陽性となるわけだ。

 問題はそれだけではない。

 PCR検査では遺伝子配列の類似性で判定するので、ここまでサイクル数を増やすと、新型コロナの遺伝子配列に部分的に類似した、病原性のない常在ウイルスが存在していても陽性になる可能性がある。

 常在ウイルスは多くの人の体内に存在しているウイルスで、こうした共生ウイルスがいくつもの臓器に多数、存在していることが近年の研究で明らかになっている。

 こうした実態を踏まえて大橋氏は、国内でPCR陽性者とされた人のほとんどは、咽頭に10~1000個程度の何らかの遺伝子が付着している状態であり、新型コロナ感染とは断定できないとしている。

 20サイクルで検査すれば、陽性者は現在の100分の1程度になるという。

 このように説明されると、陽性者の多くが無症状である理由がわかる。

 大橋氏によれば、毎日、厚生労働省や自治体で発表されている感染者数は実数をかなり上回った数字であり、本当に必要な対策をとるには正確な感染者数の把握が欠かせないという。

NYT「米国の感染者数のうち
最大90%は非感染者」

 この問題を取り上げたのが、冒頭に紹介した2つの記事だ。

「検査で陽性でも、本当は違うかもしれない」という見出しのNYTの記事は、次のような内容だ(注1)

(1)https://www.nytimes.com/2020/08/29/health/coronavirus-testing.html