マクロの観点で見た場合、よく言われるのは、完全失業率が高くなると自殺者が増える傾向があるということだ。「労働政策研究・研修機構」の調査によると、19年末から20年7年までの雇用者数の減少率は、男性で0.8%だったのに対し、女性は3.2%で、2.4ポイントの差があったという。女性の収入が減少した家庭では、2割が食費を切り詰めるほど困窮している。雇用問題は自殺に直結するとも言われているが、女性の自殺が増加したのは主に20代以下である。そのため、コロナ後の就労状況だけを自殺者数の増加に関連づけて語ることはできない。

 しかし筆者は、コロナ禍における取材の過程で、女性たちのこうした声も耳にしている。

「自分に向き合う時間が増えて、将来への不安は増したかな。母親は緊急事態宣言を受けて休職し、宣言が明けて復職していました。コロナ問題で見通し立たないときは、辛かったです」(30代女性)

「普段は母親と喧嘩をすることもありましたが、ほどよい距離感だったと思います。コロナ問題があって、母親が家にいる時間に私もいることが多くなりました。そうすると、喧嘩まではいかなくても、細かいことがお互いに気になって、イライラすることが増えました」(20代女性)

電話相談では「自殺志向」が
増加も若年層は少ない

 コロナ問題は経済問題だけでなく、将来不安や人間関係にも影響を与えている。そんな中、今回の一連の著名人の自殺報道に際しては、相談窓口の情報が添えられていた。散々「いのちの電話」が紹介されたため、「自殺志向」の相談件数が増えるのは当然だ。

 ただし電話相談では、若年層は少ない。全国の「いのちの電話」全体(宮崎と東京英語いのちの電話を除く)では、2019年で10代は2.8%(このうち、自殺関連相談は6.8%)。20代は7.2%(うち、自殺関連相談は12.3%)などと、高い比率ではない。合わせても1割程度だ。

「北海道いのちの電話」によると、電話相談の件数は、昨年平均は44件。竹内さんが亡くなった9月27日の翌日(28日)は48件、翌々日(29)は54件あった。このうち、自殺に関連する相談は28日は14件で全体の29.2%、29日は12件で22.2%と、昨年平均(11.7%、全国平均は11%)の2~3倍となっている。2日間で見れば102件で、10代は1人、20代は3人、30代は16人、40代は22人、50代は24人、60代は19人、70代以上が8人と、中高年層が多くなっている。

「三浦さんが亡くなったときは名前を挙げる相談はなかったが、竹内さんが亡くなった後には、名前を挙げている相談が数件あった」(事務局)。