中央や地方政府、銀行の潜在的な過剰債務が大きいスペイン。だがラホイ首相は、緊縮策の条件次第ではEFSFに支援を要請しない可能性もある
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 「規模にあらかじめ量的な限度は設けない」

 9月6日、欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見で、ドラギ総裁はこう発言した。従来型の国債購入策に代わる、新たな国債購入策を打ち出したのだ。

 狙いは、スペインなど重債務国の資金調達環境の改善である。ECBが国債を買い支えれば、急騰するスペイン国債の利回りが抑制され、スペイン政府や同国国債を多く持つ銀行の資金繰り破綻リスクを回避することができる。

 事実、一時は7%台まで急騰していたスペインの10年物国債利回りは、約3カ月ぶりに5%台にまで急低下した。市場がこの発言を「ECBが無制限に国債購入を行う」として高く評価したからだ。

 2010年5月に開始していた従来の国債購入策(SMP)の場合、重債務国の財政規律が緩むことを懸念し、今年2月以降、事実上購入がストップしていた。

 対して今回導入した新国債購入策は、SMPに比べて「大きな効果が見込める」と違いを強調、「OMT(Outright Monetary Transactions)」とわざわざ別名で打ち出すほどだった。

 ところがである。実はこのOMT、むしろ従来のSMPよりも実行条件が厳しく設定されており、実際に稼働するかどうかが極めて不透明な代物なのだ。

 これまで欧州各国政府に国債購入を押し付けられてきたECBは今回、OMT実行の必要条件として、「欧州各国の財政負担による国債購入」を提示した。各国が拠出するセーフティネット、欧州金融安定化基金(EFSF)が国債を購入しない限り、ECBは市場で国債を買えなくなったのである。