日本を支えてきた団塊の世代も、今や70代。
まだ先は長いとはいえ、「死」が頭をよぎるのも、また現実だ。
さて、いかにして人生をまっとうするか。
どんな肩書きも外して、『死ぬまで上機嫌。』がいちばんいい。
人生は考え方次第。
苦労の多い人生だったとしても、
「まあ、これでいいか」
と思えれば、万事解決。
終わりよければすべてよし、なのだ。
新型コロナウイルスの感染拡大を経験するなど、
「いつ死んでもおかしくない」という状況を目の当たりにしている。
ただ、いつ死ぬかわからないからといって、怯えてばかりいても仕方がない。
どんな状況を目の当たりにしても
「まあ、これでいい」「こういうこともあるだろう」
と鷹揚に受け入れられる自分でいたい。
そして、やはり『死ぬまで上機嫌。』でいたい。
漫画家・弘兼憲史が「そのとき」が来るまで、
存分に人生をまっとうする上機嫌な生き方を指南する。

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「媚びない」と「嫌われない」を両立させる

知っておかなければならないのは、高齢者の前向きな姿勢を温かく受け入れてくれるほど、世間は甘くないということです。

世の中、高齢者にやさしい人ばかりではありません。

むしろ高齢者は疎んじられる存在なのです。

高齢者は、働かずにお金を使う、見た目が汚くて醜い、がまんがきかず切れやすい……。

ちょっと悲しいですが、現実にはさんざんな思われようです。

だからといって、文句をいっても始まりません。

自分だってその昔は、年寄りの気持ちなどこれっぽちも考えずに、若さをただただ謳歌してきたのですから。

自分が高齢者になってみないと、高齢者の本当の気持ちなんてわかりません。

人間というのは、そういうものです。

ただでさえ高齢者は嫌われやすい。
まずは、そう自覚する。重要なのは普段から嫌われないように心がけることです。
僕自身、できるだけ「嫌われないじいさん」になろうと努めています。

例えば、病院に入院中の二人の高齢者がいるとしましょう。

Aさんは、看護師のいうことをまったく聞き入れず、何かにつけて「ああだこうだ」と病院側の対応に正論めいた文句をつけています。

現役時代に大手総合商社のエリートサラリーマンだったという自負もあり、過去の自慢話をすることもしばしばです。

一方のBさんは人当たりがよく、看護師さんにも丁寧に接しています。

「○○さん、いつもありがとう」「少しは自分が休むことを考えてくださいね」などと、ことあるごとに重労働の看護師さんを気遣い、労いのやさしい言葉をかけています。

さて、ある日同時にAさんとBさんが危篤になりました。

病院には人手が足りず、二人を同時にケアする余裕はありません。

果たして病院側はどちらを優先的に治療を受けさせようとするでしょうか?

いうまでもなく、Bさんのほうですよね。

もちろん、これは極端な例です。

ただ、実際に介護施設で働く方に話を聞くと、やはり人当たりのよいお年寄りのケアには力を入れてしまうと、正直な気持ちを語っていました。

それが自然な人間の感情でしょう。

嫌われ者は損をします。

損をしたくなかったら、嫌われないようにするのが得策です。

嫌われないといっても、必要以上に若者に媚びる必要などありません。
唯々諾々と相手のいうことを受け入れるわけでもなく、かといってむやみに逆らわず、穏やかに振る舞うだけでいい。

「逆らわず、いつもニコニコ、従わず」

これは、産婦人科医で「日本笑い学会」副会長である昇幹夫さんの言葉であり、僕自身のモットーとしている至言です。

自分の考えと食い違うことがあっても、いちいち逆らったり従わせようとしたりはせず、ニコニコ笑いながら尊重する。

かといって全面的に相手のいい分に従うのではなく、いったんは受け入れて自分の頭で考えつつ、納得できるところだけ聞き入れればいい。

「逆らわず、いつもニコニコ、従わず」こそが、高齢者にとっての最善の選択だと思います。

ふだんから笑顔で周りの人に心を開いておけば、どうしても譲れない局面で従わなくても、「あの人ならしょうがないな」と思ってもらえるはずです。