リーマンショック時の教訓をいかし
もっと下値で買う狙いだった?
3月にFRBが無制限の資金供給を行うことを表明し、企業から資金提供の要請がバフェットに来なかったほかに、バフェットがこれまで目立った買いをしてこなかった理由がその発言から伺われる。
「魅力的なものがないから、何もやらなかった。2008年、2009年は、世界に知らせるために買ったわけではなく、それが道理にかない、競争があまりなかったからできたことだ。我々にとって大変魅力的な条件が提示された。しかし、当時4~5ヵ月待てば、もっといい条件でできたという結果になった。08年、09年の投資タイミングはひどかった。来週、来月、来年どうなるか、だれもわからない。FRBも知らない。私もわからない。誰も知らない。たくさんの異なったシナリオがある。そして一定のシナリオの元では、我々はたくさんのお金を投入する。ほかでは投入しない」
遠まわしな言い方ではあるが、要はバフェットは5月の時点で株はもっと下がるとみていたのだと推測される。
ここでバフェットが言っているように、リーマンショックの際、バフェットが50億ドルずつの資金提供をゴールドマン・サックスとGEキャピタルに行った時のニューヨークダウは1万~1万1000ドル程度だったが、2009年3月には、一時7000ドルを割り込むまで下げた。この当時の「買ってからの下げ」をひどいタイミングだったといっているわけだ。そしてバフェットは、5月時点では今回のコロナ禍で株はもっと下がるとみていたのである。
しかしその後の米国株式市場の動きは、バフェットの見方とは逆の方向に動いている。ニューヨークダウは、新型コロナが騒がれる前の1月末の水準に戻ってきている。
バフェットは、5月2日の無人の株主総会で、7週間散髪に行っていない、きちんとした服装を止めて、7週間後に総会にスーツ姿で来るまで、どのスウェットを着るかだけだったと吐露している。こうした発言からも新型コロナは、バフェットにとっても多大の影響を与えていることが推測される。
では、状況が激変したアフターコロナの世界ではバフェットはどう動くのだろうか。この興味のつきないテーマについて次回お話ししよう。
尾藤峰男
公認投資助言者(RIA)、びとうファイナンシャルサービス代表取締役
米国CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員、日本FP協会CFP®認定者、1級FP技能士
1973年埼玉県立熊谷高校卒。1978年早稲田大学法学部卒。日興証券に1999年まで21年在籍。投資アドバイスなど主要証券業務に携わる。英国、カナダ、オーストラリア(現地法人社長)の3カ国に勤務。2000年に当社を開業。金融機関から完全に独立した資産運用アドバイザーとして、個人の金融資産や退職金の運用助言・ライフプランニング・サービスを、商品の販売手数料によらずに、フィー(投資助言料)のみで提供している。グローバルな投資理論や外国株投資、国際分散投資への造詣が深い。著者に「いまこそ始めよう 外国株投資入門」「バフェットの非常識な株主総会」。日本経済新聞等に記事掲載、メディア登場多数。
投資助言・代理業登録(関東財務局)
びとうファイナンシャルサービスWebサイト http://www.bfsc.jp/