期間収益とは

林教授 ここで考えてほしいのは、期間収益は「増加した価値の総額」であって1ヵ月間に現金が100万円入金されたわけではない、ということだ。

カノン よく理解できないのですけど。

林教授 リンゴをスーパーに卸している会社ならどうだろう。今月の売上代金は翌月以降に入金されるね。

カノン 確かに。うちの会社も売上代金のほとんどは翌月入金です。

林教授 そうだよね。会社側から見ると、商品は客に渡されているから、もはや手元にはない。その代わりに商品は売掛金に変わる。

カノン その売掛金が現金なのでは?

林教授 それが違うんだな。ちょっと難しい説明になるけど、会社が商品と交換に手にするのは「代金の支払いを要求する権利」、つまり売上債権で、これが売掛金だ。顧客が代金を支払うまでその権利は消えない。

カノン 商売って法律で守られているんだ。知らなかった。

林教授 売上債権は強力な権利だからね。食い逃げは許されない。ここまでの説明は理解できたかな?

カノン えっと……。

林教授 売上高はその会社が作り出した価値の総額であり、売掛金は顧客がその価値に対して支払うことを約束した金額なのだよ。これを複式簿記では次のように仕訳で表すんだ。

   売掛金 100万円    /  売上高 100万円
(顧客が支払いを約束した金額)(会社が作り出した価値の総額)
   B/Sに反映          P/Lに反映

林教授 売掛金は貸借対照表(B/S)に、売上高は損益計算書(P/L)に反映される。

カノン 仕訳の意味はわかりませんが、これまでの知識が繋がりました。損益計算書の売上高の金額は、お客様が商品に対して認めた価値の大きさであって、同時にお客様がお金を支払うと約束した金額でもあるんですね。つまり代金が入金されたかは関係ない。

林教授 その通り。

カノン 営業外収益も同じですか?

林教授 受取利息はお金を銀行に貸すことで、契約に基づいて新たに生成する価値だから売上高と同じと考えていい。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。 以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。