大分県竹田市の農家は長年、水不足に悩まされ続けてきた。肝心の水がなく、コメ作りもままならなかった。唯一、頼りの水となったのが、大分県が熊本県高森町に建設した大谷ダムの水だった。1940年に大野川の支流の大谷川に造られた農業用ダムで、有効貯水容量は150万トンだった。

 大谷川の上流部は、熊本県と大分県、そして宮崎県の3県にまたがっていた。熊本と宮崎の一部地域が慣行水利権を持っていて、下流部の水利用は制約されていた。

 そこに大谷ダムの老朽化が加わった。何と言っても築70年あまりの古ダムである。ダム湖の堆砂が進み、実際の貯水量は80万トンにまで落ち込んでいた。こうした事情から、竹田市の農家は大蘇ダムの水利用に地域の将来を懸けることにした。にもかかわらず、30年以上も待たされ続けているのである。まさに憤懣やるかたなしと言うしかないだろう。

 地元の荻柏原土地改良区の山村英治事務局長は、「国は地元の切実な声にきちんと耳を傾けて、1日も早く水利用ができるようにしてほしい」と、切々と語る。

国の失策の皺寄せをまた地元に
ダム所在地の熊本県は追加負担に難色

 一方、熊本県側の事情はやや異なっていた。熊本県阿蘇市のある認定農家は「自分たちがミスしたのに地元にも負担させるなんて、どう考えてもおかしい。市は追加負担には応じないはずだ。そもそも国が地質調査をしっかりやらずにつくったから、こんなことになった。地元の人間はあそこでは水は貯まらないと言っていた」と、怒りをぶちまけた。

 九州農政局は補修工事費(126億円)の一部について、熊本県や阿蘇市、大分県や竹田市にそれぞれの受益面積に応じた負担を求めている。追加の請求書である。自らの不手際の尻拭いを顧客にさせるもので、民間取引ではあり得ない(許されない)話だ。「ぼったくりバー」よりも悪質と言える。