中国・習近平が米大統領選直前に五中全会で掲げた「軍事目標」の正体先月末に開催された全会を5年前の全会と比較、習近平政権の「現在地」を考察する Photo:Kevin Frayer/GettyImages

 10月26~29日、中国共産党第19期中央委員会第5回全体会議(五中全会、以下「全会」)が北京で開催された。会議は「国民経済・社会発展第14次五カ年計画と2035年までの長期目標の策定に関する中共中央の提議」を審議・採択した。第13次五カ年計画の期間に相当する2016~20年を総括し、次の5年に向けて、国家戦略や政策方針を固めることを目的としていた。

 本稿では、全会閉幕後に公表された「公報」(コミュニケ)に基づき、かつちょうど5年前に開催された第18期の五中全会時のコミュニケと比較しつつ、習近平政権の現在地がどこにあり、どこへ向かおうとしているのかを洗い出してみたい。

加速する習近平への権力集中
コミュニケで見る5年の変化

 まず、筆者から見て最も重要なインプリケーションは、今回の全会が、中国が新型コロナウイルスを受けての難局を乗り切り、持続的に発展していくために、習近平総書記の権力基盤を一層強化し、権力の一極集中を推し進めることが不可欠であるという共産党の政治的意思を露呈していた点である。

 コミュニケは「習近平同志作為党中央的核心、全党的核心領航掌舵」という表現をした。前半部分は、「習近平を党中央の核心とする」という意味で、2016年の六中全会で、習近平に党の「核心」という称号が与えられて以来、党の公式文書、声明、談話などを通じて頻繁に使われてきた言い回しである。

 一方で、後半部分は筆者が知る限り目新しい表現である。「領航」はパイロット、ナビゲーター、案内人を、「掌舵」は舵取り、操舵手を指す。要するに、核心として全党を引き連れ、中国という国家を特定の方向、未来へと導く指導者という類の意味合いが込められている。前任者たちには見られなかった、現役ですでに「習近平思想」という自らの氏名が入った指導思想を誇る習近平には、権力が集中し、個人崇拝も横行している。

 この期に及んで、この手の言い回しや意味合いにサプライズそのものはないものの、それでも新しい言葉で習近平が何者かという点が公式に語られたという事実は軽視できない。習近平への権力一極集中はより一層加速、強化すると見るべきであろう。