たとえば、選挙戦で劣勢にある候補者の陣営で、こんなやり取りがあったと仮定します。

「○○区では7000票の見込みです」

「××区では9000票に届かない状況です」

「だめだだめだ!どの区でも1万票を超えるように、有力者を動かして票を確保するんだ!」

 そうやって、地元有力者にお金をばらまいて票を集めるとどうなるか。

 選挙の不正は全体ではなく一部の自治体で行われます。全体の一部だけに人為的な票が集まると、結果として得票数の分布に狂いが生じます。上のような事例ではベンフォードの法則とは異なり、「6」「7」「8」「9」の数字が減って「1」の数字が増えることになります。

河合夫妻の疑惑にまみれた
広島選挙区で統計に起きた異変

 2019年の参議院議員選挙の広島選挙区では、河井克行前法務大臣と河井案里参議院議員が選挙違反容疑で起訴されています。100人近くにのぼる地元自治体の長や有力議員に選挙資金がばらまかれたのですが、不正があったのかどうか、現在裁判で争われています。

 そこで、あくまで状況証拠としてベンフォードの法則で分析をしてみると、2019年の参議院議員選挙の広島選挙区の自治体別の得票数の分布は、統計から予測される結果から外れていることがわかります。

「疑わしきは罰せず」で、お金を受け取った側は放免されているこの事件ですが、あくまで統計的な状況証拠では、多くの地元の有力者が何かをしたことが示唆されます。とりあえず、広島に関する正義の気持ちは横に置いておいて、「選挙不正があると、統計数字に乱れが発生するのだ」ということだけ、ここではご記憶いただければと思います。