私はこれまで、「識学(しきがく)」という意識構造学を通して、多くの組織の問題を解決してきました。「識学」とは、組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるか、その方法を明らかにした学問です。
2020年10月時点で、約1900社の会社が識学を導入しています。また、2019年度に新規で上場した会社のうち7社が識学を導入しており、「いま、最も会社を成長させる組織論だ」と、口コミを中心に広がっています。
​本書『リーダーの仮面』は、そんな識学のメソッドを元に、「若手リーダー」に向けてマネジメントのノウハウを伝えます。本書の内容は、人の上に立つ立場の人であれば、誰しもが気づきを得られるものになっています。

「プロセス」を
評価してはいけない

 ちゃんと部下を評価できるリーダーになるためには、部下と距離をあけて「平等性」を保つ必要があります。

 好き嫌いによる評価をなくし、正しく客観的に評価することを徹底しましょう。

 そこでのひとつの結論は、「プロセス(過程)は評価しない」ということです。

 世の中では、プロセスを褒めることが是とされています。

 結果がついてきていなくても、過程を頑張っていたら、それを評価しようというのが、常識になっています。

 しかし、私は、その考えに真っ向から反対します

部下の成長を止めてしまう「何気ない一言」Photo: Adobe Stock

「褒めれば伸びる」は
子育ての論理

 なぜ、このような「プロセス重視」の世界になってしまったのでしょうか。

 その原因のひとつに、ある子育ての研究結果があります。

 その研究では、小学生が良い点数のテストを持って帰ったときに、2パターンの褒め方で、その後の成績の伸び方が変わることを実証しました。

 1つめが、「能力を褒める」(頭がいいからできたね)というパターン。
 2つめが、「プロセスを褒める」(頑張ったからできたね)というパターン。

 その2つを比較すると、前者のパターンの子は、テストの点数が下がり、後者のパターンの子は、高い点数を維持できました。それにより、「勉強を頑張っているというプロセスを褒めよう」という育て方が一般的になりました。

 この話を会社での上司部下の関係にも当てはめたのが、現在のプロセス重視のマネジメント方法でしょう

 しかし、ここで重要なのは、勉強と仕事の違いです。

「勉強したって意味がない」と思っている子どもを勉強に向かわせる方法としてなら、たしかにプロセスが大事なのでしょう。

 しかし、仕事は勉強とは本質的に異なります。

 仕事では、給料やボーナスという「目に見える成果」を受け取っています。

 生きるために働き、生きるために給料を得ていることが結びついているはずです。

 やる意味がよくわからないまま勉強しないといけない小学生と、生きるために働いている会社員とでは、管理方法はまったく異なるのが当然です

 小学生向けのマネジメント方法が、会社組織に当てはめられていることが問題なのです。