何気なく褒めると
部下は「勘違い」する
プロセス重視の弊害として有名なのが、「残業アピール」です。
先ほどの小学生のように、頑張っている姿を褒めるのであれば、「遅くまで残って働いている部下」も褒めなくてはなりません。
定時で仕事を終えて結果を出している部下と、残業してようやく結果を出している部下。
同じ結果だとするならば、評価されるべきなのは、当然、前者のほうです。
しかし、後者の部下も「よく頑張っているな」と、ついリーダーは褒めたくなってしまうでしょう。
ここで、プロセスを無視する「リーダーの仮面」が大事になってきます。
残業する姿を見て、「よく頑張っているな」と声をかけたとします。
すると、部下はどのように考えるでしょうか。
「上司がいるときは残業したほうが有利だ」
「結果が出なくても、『遅くまで頑張っている』と言えばいいんだ」
そのような思考になります。
リーダーが残業を評価している気がなくても、何気ない一言によって「評価されている」と部下に思わせてしまうことになり、認識のズレが生じるのです。
プロセス管理を省くと
「労働時間」は減る
これは、営業部門とクリエイティブ部門を統轄する、ある広告会社の部長の話です。
彼も当初はプロセスを重視したマネジメントをしていました。
営業部門ではモチベーションを上げることを大事にし、クリエイティブ部門でもプロセスを管理する状態でした。
その結果、部全体で管理する工程が増え、全体の労働時間も減らず、チームがどんどん疲弊していったと言います。
そこで、プロセスへの介入は一切やめて、結果だけを管理するようにしました。
営業部門は、訪問数と提案数の結果だけを確認。クリエイティブ部門も、途中経過を見ず、それぞれのクリエイターの等級に合わせて報告と指導の回数を設定しました。
そうすることで、労働時間を減らしながらも自らで回せる仕事が増え、部署全体の働き方が改善されていったそうです。
これまで部下のプロセスを褒めてきた人が、それをやめるのは葛藤があるかもしれません。しかし、仮面をかぶり、実践してみてください。任せてみてください。
きっと、そのうち部下の成長スピードを実感するでしょう。
株式会社識学 代表取締役社長
1979年、大阪府生まれ。早稲田大学卒業後、株式会社NTTドコモ、ジェイコムホールディングス株式会社(現:ライク株式会社)を経て、ジェイコム株式会社にて取締役営業副本部長を歴任。
2013年、「識学」という考え方に出会い独立。識学講師として、数々の企業の業績アップに貢献。
2015年、識学を1日でも早く社会に広めるために、株式会社識学を設立。
人と会社を成長させるマネジメント方法として、口コミで広がる。2019年、創業からわずか3年11ヵ月でマザーズ上場を果たす。2020年10月現在、約1900社の導入実績がある。
主な著書に『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)などがある。