「開成」の英断、運動会中止と入試の追試を決めた理由創立150周年記念事業で工事が続く中、2021年入試は実施される 

文化祭は準備中、入試の追試も設定

――文化祭の方はどうなりましたか。

野水 文化祭は毎年9月に行っていますが、今年は1学期の間、準備期間を十分にとれませんでしたので延期して、2021年1月9日と10日に開催する予定です。来場者を受け入れるかどうかは状況を見て判断する段取りが出来ています。来てもらえないことも想定して、オンラインでも準備を始めています。 

――いまの子どもたちは映像づくりが上手でしょうね。 

野水 もうびっくりします。すでにバーチャルの校舎ができていて、その中をのぞけますが、「どうやったらこんなことができるんだ」というくらいのレベルです。

――ところで、経済的理由で開成への進学を断念せざるを得ない生徒向けのフィナンシャル・エイドを2019年から中学に導入されました。以前から「開成会道灌山奨学金」でやっていらしたけど、中学にも導入されるのはすごいなと僕は思うのですが。

野水 前校長の時に導入されたものですが、公立に比べて授業料が高いからと敬遠してしまう生徒にもできるだけ開成に来てもらいたいという思いがあって、そういうものを設けた次第です。このコロナ禍で収入が大きく変化した家庭にも補助を出す形で2020年は少し支給対象者数が増えています。例えばイベント関係を生業にされている保護者の方などは、コロナ禍の影響で、大きく収入が減少していらっしゃるようですから。 

――東京都などの公的な就学支援金が手厚くなった高校の方は、奨学金の資金に少し余裕が出たのではありませんか。

野水 それを少し中学の方に回す形になっています。開成学園の同窓会である「開成会」の寄付により、入学金や授業料等を免除する「開成会道灌山奨学金」を毎年、中高各10人程度に交付しています。合格者であれば入試の成績は問いません。

――コロナへの対応では、2021年入試で2月23日に追試を行うと発表されましたね。これには驚きました。おそらく開成としては初めてのことかと思うのですが。

野水 対象となるのは「入試当日に、新型コロナウイルス感染症に罹患(りかん)している」、もしくは「濃厚接触者に特定されているため、受験できなかった」志願者です。例年ですと、学園説明会資料にもあるように、「病気で受験できなかったら(欠席したら)追試験はありますか」という質問に対して、「残念ながら、追試験は行いません」という対応です。

 今回、追試は初めてのことですし、学校として大きな負担となりますので、校内でもさまざまな意見がありました。

――同じ問題でやるわけにもいきませんしね。

野水 はい。文部科学省が早くに追試の実施を要請してきており、大学は対応していましたけれど、私立の中学・高校は対応しているところが少ない状況でした。新型コロナウイルスに感染した生徒も、インフルエンザ罹患の場合と同じでやむを得ないのかなという意見がある一方で、やはり新型コロナウイルスの感染拡大防止に尽力している社会の中で、私たちにできることとして、志願者の受験機会の確保のため、追試の決定を教員会にて行いました。

――濃厚接触者というのは本人に知らされるのでしょうか。

野水 陽性の判定が出れば保健所から通知する文章が出ます。濃厚接触者の場合はそういう通知は出ないようですけれども、本人了解のもとで、学校が問い合わせれば保健所が回答することを確認させていただきました。

※第3回に続く