『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

独学の達人が教えるなぜ「年が変わる」だけで、世界中の人がこんなに大騒ぎするのか?Photo: Adobe Stock

[質問]
 たかが日付の数字カウンターのリセットに、世界中の人間がこんなに支配されてるのはなぜだと思いますか?

儀礼はヒトが自然に「秩序」をもたらす知恵です

[読書猿の回答]
 暦的儀礼は、特定の時点に行事を置くことで、もともと切れ目のない時間の流れを分節化し、反復するものとして構造化し、その経過に意味を与え、自然に文化的秩序を重ね置くものです。

 新年は特に大きな時間単位「年」が原点に戻る時であり(いつを年の始まりとするかは様々ですが)、多くの文化で、旧年の死や焼却、旧年と新年の闘争の象徴である火のきりつぎ、来るべき年の豊凶の占い、来るべき年の健康と繁栄のことほぎ、神への供物などの最重要な暦的儀礼が行われました。

 例えば、たいまつを作り古い衣服や道具を焼却する(北米インディアンのチェロキー族)、大きなヘビの形代を作ってこれを太陽の敵として擬戦を行う(北米インディアンのモキ族)、祝火でホーリカーの人形を焼く(ヒンドゥー教のホーリー祭)、ウェスタの聖火をあらためる(古代ローマ)、鉄砲を撃って新年を迎える(スカンジナビアの諸市)、年越しに爆竹を打ち鳴らす(中国)等など。

 しかし何時を年の始まりとするのかは、様々です。

 イランでは3月21日の春分(ノウルーズ)が元日であり、古代エジプトでは新年は9月21日の秋分が、古代ギリシアでは前5世紀までは12月21日の冬至が、中世初期の教会ではキリスト降誕御告である3月25日が1年のはじまりでした。タイでは、太陰暦時代の慣行が残り、1941年に1月1日が年の始まりと定められるまで、4月13日が元旦でした。

 古代中国では新しく国をたてるごとに暦を改めたので、夏の時代は十二支の寅の月(今の1月)、殷は丑の月(12月)、周は子の月(11月)、秦は亥の月(10月)が正月でした。

 漢代以降は清代まで夏の暦が用いられ、この暦がわが国に伝来されたので寅の月が正月となりました。