『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が10万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏が「著者の知識が圧倒的」、独立研究者の山口周氏も「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。(イラスト:塩川いづみ)
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
「速読ってどうなんですか?」と言う相談です。
たくさん本を読んで勉強したいけれど、難しい本は理解するのにどうしても時間がかかってしまいます。今も、『カラマーゾフの兄弟』の最終章を読んでいますが、ここまでで半年近くかかっています。内容に関しても面白いと思うところはありましたが、カラ兄のエッセンスをこの一回の読書で理解できたとは思えません。
速読を学べば色んな本の情報を早く汲み取れるのかな、と思うのですが、書店で見かける速読術の本には眼球の運動方法とか、「1秒でページをめくれ」とか、「脳には無意識にインプットされてる」とか……いまいち信用できない方法ばかり。
速読とはそもそも意識して実践するテクニックなのか。本の情報をすばやく読み解くにはどうすればいいのか……など、速読について、既出の質問と思いますが、教えていただけると幸いです。
無理に速読せず、時間をかけて読んでいい
[読書猿の回答]
まず読書とは書物から自分への一方通行ではなく、自分の持っているものと書物が抱えるものとの間の双方向のやり取りです。一般に、読む速度が上がるほど書物→自分に比して自分→書物の割合が増えていきます。
悪く言えば、速読になればなるほど、書物を読むというより、自分の中にあるもの読む方が多くなります。読み慣れたシリーズものだと登場人物も口調も筋立てもお馴染みなのでかなりの速度で読むことができます。そしていつもとは違うところだけを汲み取るので当然速度は上がります。
反対に慣れないものを読むときは、見知らぬ用語や表現や構成を汲み取り咀嚼しながら読んでいくので、つまり自分を作り変えながら読むことになるので、当然時間がかかります。
しかし読書がインプット以上のものであることを知るなら、当然に費やすべき時間だとも言えます。