国内の地域経済レベルでは
空洞化は起こりうる

 日本経済全体として空洞化が起きないとしても、地域経済レベルでは空洞化は起こるかもしれない。これは今後の日本の地域政策を考える上で重要な論点である。詳しくは今後の連載で取り上げるとして、ここでは一言だけコメントしておきたい。

 日本全国どこに行っても、田園風景のなかに多くの工場が進出している。地方都市は、大企業の工場やその下請けに雇用の多くを依存してきたと言っても過言ではない。農家の多くが兼業農家であるということは、農業人口でさえ工場での雇用に依存しているということなのだ。

 いま、そうした地域の雇用が厳しい状況になっている。自動車や家電、あるいはその部品をつくっている工場が閉鎖し、アジアに移ってしまう恐れがあるのだ。田園地帯から工場がなくなれば、それは地域の雇用の喪失ということになる。

 日本企業が海外展開を進めていっても、日本全体では空洞化は進みにくいと言った。海外で多くの単純労働を活用して生産が拡大すれば、それだけ日本国内で製品や技術の開発、国際戦略、法務、調達、金融戦略などの人材が必要となる。企業がグローバルで生産を拡大させれば、それだけ国内での雇用も拡大する傾向となるのだ。

 ただ、工場で単純に生産を続けるという形の雇用は、日本では縮小していく。つまり、農村や地方から、大都市、それも首都圏などへの雇用のシフトが、グローバル化によって加速化するのだ。地方の人が、大都市の人よりも空洞化という現象に敏感なのも当然だろう。

 地方経済を活性化させるためには何が必要なのか。この点については今後の連載で詳しく考察したいと考えている。ただ、一言だけ述べるなら、戦後50年以上にわたって続いてきた工場誘致による雇用戦略に今後もずっと頼り続けることは難しい、ということだ。

 日本経済全体を動かしている大きな変化を理解し、地方都市は今後どのような形で雇用を確保していくのか、真剣に考える時期にきている。グローバル化は地方経済に空洞化をもたらしているのであり、新たな方向への地域活性化の模索が必要な時代になっている。


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