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「5%ルール」──。銀行が個別の企業に出資する場合に、議決権(株式)の保有比率を5%以下に制限する規制だ。銀行による企業支配を防ぐために定められた金融行政の軸となる規制について、金融庁は年内にも審議会を通じて緩和に向けた議論を始める。
バブル経済の崩壊以降、銀行が大量に保有していた企業の持ち合い株を売却してきた中で、出資規制の緩和は一見すると金融政策の大きな方針転換のように映る。
本来であれば法改正を狙う当局と、影響を受ける銀行との間で、互いの利害をぶつけ合うようなさや当てがすでに始まっていてもおかしくない。
しかし、現状ではそうした様子は見えず、むしろしらけた雰囲気が銀行界を中心に漂う。それは、政府・民主党が規制緩和の主な狙いについて、ベンチャー企業などの創業支援という見当はずれの目的を示したことに原因がある。
民主党の成長戦略・経済対策プロジェクトチームが、銀行出資規制の緩和を打ち出したのは今年4月。その後、深い議論の形跡もないまま関係閣僚による「成長ファイナンス推進会議」の最終報告に出資規制見直しの文言を入れ、7月末に政府が閣議決定した「日本再生戦略」にも同内容を明記した。
政治主導によって、当局が見直しに動く既定路線が出来上がったものの、現場では早くも5%ルールの大枠は変えず、例外規定の一部見直しにとどまる空気が支配しているのが実情だ。
確かに、銀行がリスク回避のため資金を十分にベンチャー企業などに回さず、過度に国債に振り向けているという批判は絶えない。政治主導で規制を緩和し、企業への資金供給を後押しするという方向性に異論はない。