高配当株やJリート、優待株などで高利回りを期待して投資をしたが、期待を裏切られるケースが相次いでいる。コロナの感染拡大で低成長、低金利が続く中、今後も有望な商品は何か?危険な投資先は? 投資する際の注意点は?『週刊ダイヤモンド』12月19日号では、人気の高利回り商品を総ざらいした。

下値不安が少ないはずだった
高配当株やJリートのコロナ後の誤算

 もうすぐ還暦の記者が駆け出しのころ、今は亡き日本興業銀行(現みずほ銀行)の店舗の前には、開店前から人だかりができていた。

 お目当ては、人気殺到の5年物利付金融債「ワイド」だった。利回りはなんと年9.6%、満期の5年後には元金が約1.6倍になった。

 あれから30年。低成長に加え、先進国でダントツに膨れ上がった公的債務。長引くゼロ金利で、日本を取り巻く投資環境は様変わりした。

 定期預金の金利の高さで人気があるオリックス銀行でさえ、5年定期の金利は年0.28%でしかない(12月1日現在、eダイレクト預金)。

 そんな中で人気を集めたのが、確定利回りではないものの、3%から7%ぐらいまでの利回りが期待できた高配当株やJリート(不動産投資信託)だった。

 高利回りのため、全体相場の急落局面でも下値不安が少ない――--。高配当株のそうした定評は、新型コロナの感染拡大による急落相場でものの見事に打ち砕かれた。

 2019年大発会時点での予想配当利回りの上位30社の現在までの投資成績を調べたところ、配当を受け取ったとしても、9割の企業が日経平均よりも悪かった。

 Jリートも同様である。少額から不動産に分散投資が出来て、分配金が安定しているのが魅力だった。だが、日経平均株価が29年ぶりの高値を更新する中、東証REIT指数はコロナ前を25%も下回って推移している。

 コロナ感染を避けるためのテレワークの普及などから、特にオフィス型のリートが苦戦を強いられている。

Jリートの投資対象別見通し
下げすぎた大型オフィス型銘柄が魅力的な水準

 一方、世界的なカネ余りから、株式市場には大量の資金が流れ込んでいる。米国株に引っ張られる形で、日経平均株価も29年ぶりの高値を更新したが、コロナの第三波が襲来した日本経済の先行きは厳しい。

 年末年始にかけて、資金が枯渇した中小企業で倒産・廃業に至るケースが増えると予測されている。大企業も業績の急激な回復は難しく、補償や景気対策で公的債務もますます膨らむ。そのため、今後もしばらくはゼロ金利が続く、というのが専門家の共通した意見である。

 そうした環境下で、今後も有望な投資先はなにか? 投資する際に注意する点は? 「週刊ダイヤモンド」12月19日号では、人気の高利回り商品を中心に総点検した。

 例えば、予想配当利回りが一定以上の銘柄から増収、増益、増配など複数の条件を設定して銘柄を選抜。厳しい条件をクリアした「安定高配当株60社」を、直近10期の増益回数別に配当利回りが高い順にランキングした。

 また、個人投資家に人気の高配当株や株主優待株に関しては、銘柄ごとに最新の決算分析を基に、買いか売りかをズバリ診断している。

 Jリートでは、オフィス型や住宅型など投資対象別に分配金利回りの水準や将来の業績見通しを掲載。特に大型のオフィス型銘柄は 在宅勤務の定着が逆風となり、3月の急落時と同水準の価格で推移している。ただし、今回は金融危機ではなく、賃料単価の急落は考えにくい。空室率が来春に5%程度まで上昇しても現状の価格は割安過ぎるため、買いの好機といえる。

 本特集ではこのほか、最高値更新中の米国株、コロナ禍で融資条件が厳しくなった不動産投資などについても取り上げた。低インフレ、低金利が続く中での投資の参考にしてほしい。

(ダイヤモンド編集部・田中久夫)