学生の心理にも変化が起こっている。日本への進学や就職を希望して来日したとはいえ、「やはり帰国したい」と考える学生も出てくるようになった。我が子の生命を案ずる親や親戚からの「中国の方が安全だから帰ってこい」という、矢のような催促があったためでもある。必死で日本語の勉強に打ち込んでいたが日本での大学進学を諦めた学生や、単位取得に励みながらも退学した大学院生もいた。

 コロナの封じ込めの成功と急速に立ち直った祖国の姿に「やはり中国にこそチャンスがあるのではないか」と思う学生も出てきた。しかし、彼らが中国に帰国したところで待っているのは、日本以上にし烈な競争社会だ。中国人留学生の学習サポートを行っている非営利団体の代表者は厳しい現実を指摘する。

「確かに、『チャンスがあるのは中国だ』と考えを変える学生もいます。でも、その中国にはさらに優秀な人材が山ほどいて、彼らが帰国したところでよりよい就職先を見つけることはもっと困難なのです」

 ここ数年、中国では米中貿易戦争の影響で、一流の人材ですら仕事にあぶれるような状況だ。加えて、コロナの感染拡大で企業の倒産やリストラが相次ぎ、有名大学の卒業生すら路頭に迷っているとも報じられている。家政婦やフードデリバリーの配達業者になるなどして、窮状をしのぐ大卒者もいるくらいだ。

 2008年の福田康夫内閣以来、日本政府はグローバル戦略の一環として「留学生30万人計画」を推進していた。少子高齢化の影響で、外国人留学生は定員割れを起こした大学の埋め合わせにも貢献してきた。一方で、中国では、詰め込み型の厳しい教育についていけない子どもたちが続出し、その受け皿のひとつが日本留学にもなっていた。こうした需要と供給のもとで日本における留学生は数を増し、2019年5月時点で、目標数字を超えた31万人(うち中国人留学生は12万人超、日本学生支援機構調べ)が在留する。

 コロナ禍の2020年は、目まぐるしく変わる世界情勢や社会環境に、中国人留学生たちも翻弄された1年だった。日本にとどまっている学生も帰国した学生も、この先どこに活路を見いだすのか…。来年はさらなる試練が待ち構えている。