多くの投資家がPERを過信しすぎて失敗する理由は、ここにあります。

PERだけで比べてしまうと、E社が「あえて利益を減らしてまで広告宣伝費を投じ、将来の利益を増やそうとしている」という事実を見逃しがちなのです。

仮にE社が広告宣伝費を節約して、高い利益率を上げることに舵を切ったら、F社と同様に利益率25%を上げることも可能でしょう。そうなった場合、E社の業績は次のようになります。

●E社(目先の利益を重視した経営に切り替えた場合)
時価総額:60億円
売上:20億円
利益:5億円
利益率:25%(利益を出そうとした場合)
PER:12倍

PER60倍と割高だったE社が、目先の利益を重視すれば一転してPER12倍となり、F社以上に割安で有望な投資対象となります。

つまり、E社の潜在的な収益力は、F社と同等レベル。それにもかかわらずPERを基準にすると、市場からは低評価を受けるということなのです。

将来的な伸びしろを抜きにして、E社がF社と同じPER30倍という水準で評価されたとすると、理論上の時価総額は次のようになります。

●E社(利益率25%・PER30倍で評価された場合)
時価総額:150億円(理論値)
売上:20億円
利益:5億円
利益率:25%(潜在)
PER:30倍

つまり、E社はF社と比べても、実質的にはかなり割安で、有望な投資対象だと結論づけられるのです。

E社のように将来への先行投資(広告宣伝費など)によって目先の利益(率)が低いことで、時価総額が低い小型株は常に存在しています。

こうしたダイヤの原石のような小型株を見つけて、株価が上昇し始めたタイミングで投資をする。これが個人投資家にとって、リスクを抑えつつ効率的な収益を期待できる投資手法です。