バイデン次期政権のTPPへの姿勢が
今後の世界情勢を左右する理由

 米中の対立の構図は大きく変わらないだろう。トランプ政権は中国の半導体産業の中核的企業であるSMIC(中芯国際集成電路製造)をブラックリストに掲載し、全人代(全国人民代表大会)幹部に制裁を科す。それに中国は反発している。

 また、バイデン氏はトランプ政権下で進められた対中政策をすぐには見直さない意向だ。米中の対立は先鋭化するだろう。そうした展開が見込まれる中で、米国がTPP復帰を目指すのであれば、国際社会が連携し中国の台頭を食い止めることはできるだろう。

 しかし、来年(2021年)1月20日の大統領就任後、バイデン氏は感染対策と雇用を中心とする経済対策を優先しなければならない。早期のTPP復帰への言及は、同氏の支持率を低下させる可能性がある。バイデン政権が多国間主義に基づく対中包囲網を目指すことは容易ではないだろう。

 つまり、今後の世界経済を取り巻く情勢は、米国のバイデン次期政権がTPPにどういった姿勢を示すかによって左右される。バイデン氏が早期にTPP復帰を目指すことができるなら、アジア太平洋地域を中心に、世界経済の安定感は高まる可能性がある。

 それとは逆に、米国のTPP復帰が容易に進まず、中国がTPP参加をより重視する場合、対中包囲網は崩れ、アジア太平洋地域の不安定感は高まるだろう。そう考えると、国際情勢の先行き不透明感は高まっている。

 韓国はそうした展開に対応するために、TPP加盟への意欲を示したとみられる。ただし、財閥企業を重視してきた韓国が競争ルールの統一などを重視するTPPの内容に応じられるかは不透明だ。

 また、貿易面で韓国はわが国との通商問題を抱えている。産業補助金を手放せない中国が、TPPのルールに従うことも容易ではない。つまり、中韓にとってTPP参加への姿勢を示すことと、ルールに従うことは別物だ。

 中国の台頭に不安を募らせるアジア太平洋地域を中心とした国々との信頼関係の強化のため、そしてバイデン政権のTPP復帰を促すため、わが国は、米国を中心に自由貿易の促進と競争ルールの統一によって「対中包囲網」を整備しようとしたTPPの理念を重視し、是々非々の姿勢を明確に示す必要がある。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)