残価設定の期間を短期にすれば
魅力は100倍増に

 35年後の買い取りや売却はどうなっているか、誰にも想像できないからこそ、低くしか残価設定できないので、貸す側・借りる側双方に意味がない。しかし、この期間を5年、10年と短期にするならば、話は違ってくる。

 期間が短い分、リスクは軽減され、住宅ローンを組み直すことも現実性を帯びる。つまり、5年後10年後ごとに資産価値を再評価し続ければいいのだ。5000万円借りて、10年後に4000万円の残価を想定していても、10年後に4500万円の市場価値があれば、そのまた10年後は、3000万円ではなく3500万円を想定することで返済額が市場価値と連動して軽減することができる。

 もっと短くして1年ごとにすると、住宅ローン商品自体が変貌する。1年後に買い取る相手を毎年決めるようになると、毎月の返済金額は市場価格をさらに反映したものになる。値下がりリスクが低いところでは、購入価格と変わらない1年後の買い取り価格になるところも出てくる。そうなると、返済金額はわずかでいいことになる。

 この買い取り価格も、転売業者を対象にすると、転売利益を出すには現状価格の少なくとも1割以上低くなければならない。しかし、自宅を買う人が買い取ることにすれば、転売利益が必要ないので、市場価格で買うことになる。その際は、売り手と買い手がすでに決まっているのだから、仲介手数料は事務手数料並みの価格(例えば、双方から1%)でいいだろう。

 つまり、残価を自宅購入者が支える市場を作ってしまえば、住宅ローンは商品設計の根本から変わってしまうことになる。

国策の残価設定型住宅ローンは
健全な市場形成につながる

 私たちは、自宅の資産性においては、売却を伴うことで含み益が実現益になることを説いてきた。マンションの経年での価格変化を数値化し、それが一定の法則性に従って資産性が維持されることを発表したところ、本はベストセラーになり、自宅で稼ぐことができる人を数多く輩出している。資産性を語るなら、売却は大前提なのだ。

 そこまでマンションを科学したにもかかわらず、そもそもの問題は、「資産性があるにもかかわらず、住宅ローンの完済を求められること」にある。資産性がある物件は単価が高く、値下がり幅が小さくても、返済額は非常に高額だった。値下がりしにくいからこそ、返済額が少なくなってしかるべきなのに、資産価値を一切見ない金融機関によって、ローン返済を強いられたのだ。

 不動産の売買価格は「ローンの付きかた」で決定される。つまり、住宅ローンが潤沢に貸し出されるなら、不動産価格は値上がりしてきた。それがアベノミクスの金融緩和によってマンション価格が上がった最大の理由であった。売買価格においては、需給バランスの影響は軽微で、ローンの影響のほうが圧倒的に強く受けるものなのだ。

 ということは、国策の残価設定型住宅ローンが生まれることで、資産性のある不動産はその市場性からさらに値上がりすることになるが、返済額はそれほど増えない。これは、資産をインフレさせて返済能力を高めているのであり、バブルではないため、健全な市場形成ということができる。

資産性がある不動産が
より安価に手に入る時代へ

 国策の残化設定型住宅ローンは、資産性がある不動産には適用されるが、資産性がない不動産には適用されることはないだろう。

 この意味で、戸建よりマンションのほうが、地方より都市部のほうが、向いていることは明らかだ。価格変動幅が小さく安定しているので、計算しやすいためである。戸建や地方では、マンションより中古市場での取引量が少ないだけに、次の買い手を見つけるのが難しいという現実がある。つまり、こうした場合は施工会社(上記の新生銀行の場合は旭化成ホームズ)の買い取りという条件が必要になる。

 事業者の買い取りを伴うようでは、ローン商品の魅力がないことは説明してきた。結局のところ、残化設定型住宅ローンは資産性がある不動産だけに適用される商品ということになるのだ。

 こうなると、より都市部に住むことが住居費を下げるコツになり、人口減少している日本ではコンパクトシティ化を推進することにもなる。これも国策となる。国・不動産会社・銀行などそれぞれの思惑はあるだろうが、国策の残化設定型住宅ローンは、市場の資産価値を反映することでさまざまなメリットがある。今後の動向を大いに期待したいものだ。