モール運営の楽天が
直販戦略にかじ
1997年に三木谷浩史氏ら6人で創業した楽天は、商店街(モール)方式で外部の出店者を募るECサイトだ。いまや出店者は5万店を超える巨大なマーケットプレイスとなっている。楽天にとっては、このモール方式が、直販を中心に巨大化してきた米アマゾン・ドット・コムとの差別化要素だった。ところが近年、ファーストパーティー(直販)事業を拡大させていることで、一部出店者との内部対立が深刻になってきた。
直販事業で最も目立つのが衣料品通販サイトの「楽天ファッション」だ。19年10月に、楽天の直販型ECの「楽天ブランドアベニュー」の名称を変更して販売を強化。1年間で100ブランドほど追加し、現在は1200ブランドの品ぞろえで販売を伸ばしているようだ。
楽天市場でアパレルを手掛けるある出店者は「楽天ファッションのサイトは、楽天の直販ばかり。その上、楽天市場にも出店しているので、うちの顧客が完全に奪われている」と憤りを隠さない。
これに次ぐ存在の直営店が「楽天24」。過去に買収した爽快ドラッグや旧ケンコーコムを統合し、爽快ドリンク、ネットベビーワールド、本間アニマルメディカルサプライなど複数の店舗も一括して運営している。これにより、飲料、健康食品、医療品、ベビー用品、ホーム&キッチン用品、ペット用品などあらゆる日用品を扱う巨大な直営店になった。このような幅広い品ぞろえにより、楽天市場内の出店者の商品と競合するケースは多いという。
楽天の直営店の歴史は意外に長い。始まりは、2000年に開始した楽天ブックスだ。同じ年に日本に上陸したアマゾンに対抗してスタートした。いまや書籍だけでなく、ゲームソフトやパソコン周辺機器など取り扱いの幅を広げている。
大きな節目になったのが18年ごろだ。同年4月にビックカメラと共同運営する家電通販サイトの「楽天ビック」、同年8月には西友と共同で運営する「楽天西友ネットスーパー」をそれぞれ開設し、この頃から直販強化の動きが鮮明になってきた。
直販を強化するには、仕入れた商品を保管する物流拠点の確保が欠かせない。楽天は18年1月に「ワンデリバリー構想」を掲げ、物流拠点や配送網の整備に2000億円を投じる方針を表明して「持たざる物流」の戦略を転換。表向きの狙いは配送料高騰に苦しむ出店者への物流サービスの提供だが、それに合わせて直販用の物流倉庫も着々と整備してきた。
楽天の直販戦略の強化は、巨大な物流網を構築して規模拡大を進めるアマゾン・ジャパン(東京・目黒)に対抗する狙いがある。こうして、モール型モデルで出店者を増やしてきた楽天が、急速にアマゾン型の直販モデルに近づいてきている。