今回の内閣改造で野田佳彦首相は田中真紀子氏を文部科学大臣として起用し、世間をアッと驚かせた。

 果たして首相には“真紀子リスク”を抱えて政権を運営する覚悟はあるのだろうか。

 起用した理由を常識的に考えると、①代表選での論功行賞、②知名度、人気、発信力の活用、③中国へのメッセージ、④小沢一郎氏への意趣返しなどが頭に浮かぶ。

 民主党内にもあからさまな論功行賞人事との批判があるようだが、首相を支持しなかったグループからの入閣者がないのだからそう言われても仕方がない。

かつては圧倒的だった「真紀子人気」も
今は見る影もない

 真紀子人気も10年前とは大きく違っている。

 外務大臣更迭のとき、小泉純一郎首相(当時)に私が「真紀子さんを降ろせば支持率は20%は下がる」と言ったところ、小泉首相は即座に「いや支持率は半分になる」と断言した。

 実際、外相更迭で小泉内閣の支持率は80%から40%に急落した。それを予想しながら小泉首相は外相更迭を断行したのである。しかし、当時の彼女の圧倒的な人気は今は見る影もない。

 親中派の彼女の起用は、中国に日中関係改善の意欲ありのメッセージとして伝わるに違いない。また、少なくとも首相は対中強硬派と言われる前原誠司戦略担当相との相殺効果を期待しているようにも見える。

 それは、自民党人事で、日中友好議連の高村正彦会長、甘利明幹事長を、それぞれ副総裁、政調会長として起用し、安倍晋三(総裁)、石破茂(幹事長)両氏の対中強硬姿勢を緩和しているのと似ている。

「生活」の小沢一郎代表から見ると、今回の人事は明らかに自分への意趣返しに見えるだろう。田中真紀子氏に限らず何人かの小沢氏側近が入閣を果たしている。かつて小沢氏に近かった人ほど厚遇されている印象も受ける。