「緊急避妊薬の避妊成功率は100%ではありません。たとえわずかであっても妊娠してしまう可能性がある限り、緊急避妊薬を服用したとしても、多くの女性は妊娠のリスクを考えるはずです。『緊急避妊薬があるから何をしても平気』だと思う女性はほとんどいないのではないでしょうか。緊急避妊薬の市販化を巡る問題には、議論を進める男性側が懸念するイメージと、使用者である女性側の気持ちとの間に齟齬(そご)があるようでなりません」

実現の鍵となる
薬剤師の役割

 薬の乱用や避妊しない性行為の増加といった“風紀の乱れ”が懸念され、かき消されてきた緊急避妊薬の市販化を求める声。これまでは局所的な議論にとどまってきたが、SNSの普及も手伝い、若い女性や、現場の医師の意見が可視化されることによって、これまでにない広がりを見せている。

 緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」と語る重見氏に、今後の議論の進展を見守る上で注目すべきポイントを伺った。

「これまでの経緯を踏まえれば、市販化が実現した際には『第1類医薬品』に分類される可能性が高いと考えられます。そうなった場合、薬はカウンターの後ろの棚や鍵付きのショーケース内に置かれ、薬剤師の説明を聞いた上でないと購入することはできません。また悪用や他者への譲渡を防ぐため、薬剤師の立ち会いの下で服用することを購入の条件に加える、といった議論も出ており、緊急避妊薬の市販化と聞いて多くの人が思い浮かべる“開放的なイメージ”とはまた違った形に落ち着く可能性があります。いずれにせよ、現在は医師が果たしている役割を担うことになる薬剤師の存在と、研修や情報連携などの仕組み作りが、今後の議論において鍵になっていくはずです」

 賛成派と反対派の意見が紛糾している緊急避妊薬の市販化を巡る議論。どのような形で決着がつくのか、今後も要注目だ。