まず、この問題の根幹にあるのは、「このまま地球温暖化が進むと地球に人が住めなくなる」という危機感です。20年くらい前までは、こうしたメッセージは警告程度に受け取られていましたが、温室効果ガスの排出状況はその後、当時の予測通りに悪化していきます。そして地球温暖化により、近年では毎年のように過去に例のない巨大台風や豪雨がやってくるようになりました。温室効果ガスは、庶民の生活にも実害を与え始めています。

 そして、実はこのままのペースで進むと、2100年には地球は今のように人類が住める場所ではなくなることがわかっています。それを食い止めるための指針が「2度目標」というもので、地球の平均気温を産業革命以前と比較して2度以内の上昇に抑えなければいけません。この2度は、「これを超えたらもう元には戻れない科学的な相転移点」だと認識されている、ぎりぎりの基準です。

 ところが、その目標を定めたパリ協定からアメリカが離脱してしまいます。トランプ政権が誕生して、エネルギー業界からの献金が多い共和党が権力を握った直後から、この動きが表面化しました。こうして、脱炭素の流れは混沌としていきます。その間も、大気に占める二酸化炭素の量は年々増加を辿り、現状、このままでいくと2030年に地球の平均気温は1.5度上昇することが確実だと言われています。

バイデン政権誕生で状況が一変
「脱炭素」へ舵をきった菅政権

 こうした流れが急に変わったのが、民主党のバイデン新大統領の誕生です。もともと政策としては脱炭素を強調していたこともあり、来年の正式就任後にはアメリカのパリ協定復帰は確実だと思われます。

 脱炭素というと、産油国の影響力が重要です。世界の原油の3分の1はサウジアラビアやイラク、リビアなどの中東から北アフリカにかけてのイスラム諸国が、鍵を握っています。歴史的には、これら中東の産油国がオイルパワーを握っていました。

 しかし21世紀に入り、同じ世界の3分の1の原油生産を3つの大国が握るようになります。アメリカ、ロシア、中国です。中でもアメリカは世界の6分の1の原油を生産しているので、炭素に関する影響力は世界で一番大きい。

 これまでの脱炭素の動きは、こうした「炭素利権」から距離がある欧州がけん引するイメージが強かったものです。欧州といっても、イギリスとオランダは中東に利権を持っているわけですが、それでもドイツ、フランスなどの多数派は「石油利権よりも地球の方が大切だ」という立場です。そこに深刻な大気汚染に悩む中国が賛成する一方で、アメリカとロシアは脱炭素にはそれほど力を入れていない――。これが2020年までの世界の勢力図でした。