1. 目的の多様化

 組織と関係を取り結ぶステークホルダーは多様である。お客様にもいろいろなニーズがあり、そのニーズを満たしてくれるから、その会社の商品を買う。社員も同様であり、会社の目的を実現することが当人の目的と合致して入社してくる者もいるが、組織の目的には興味がなく、自分自身の持つ目的(報酬や自己研さんの機会)の実現のために入社してくる者もいる。

 もともとは、特定の商品で世界をよくしたいと言っていた企業が、その支払いをスムーズにするために金融サービスを行い、気が付けばそちらの売り上げのほうが大きくなり、自己定義としても金融業に変わるといったこともある。あるいは、ビジネス遂行のために最先端技術を持つ社員の比率を増やし、それによって大成功したが、今度は彼らの発言権が強くなり、顧客サービスよりも、さらなる最先端技術の追求の優先順位を高くせざるを得なくなったりするようなこともある。

 このように、ステークホルダーとの関係から目的が多様化し、場合によっては主従が入れ替わり、組織の設立時の目的から大きくブレているかのように見えることがある。

 たとえば、もともとオンライン書店から始まったアマゾンは、生活雑貨から電化製品まで幅広く扱うECサイトとなり、また一方では事業別に見ると、AWS(Amazon Web Services)というクラウドストレージサービスが、もっとも多くの営業利益を稼いでいる。書店だと思っていたら、まったく違う事業体になっていたのである。

2. 手段の目的化

 組織には最終的な目的(これらの多くは経営理念などに掲げられている)を実現するための手段が必要であり、その手段を実現するための中目的があり、その中目的を達成するための手段があり、その手段の達成が小目的になり……というように、目的と手段ははしご状になっている。

 例えば配車アプリを作った企業なら、大ざっぱに言うと、乗りたいときにすぐタクシーを拾える世の中にしたい→乗客を探すドライバーとタクシーを探す人を結びつける→ウェブ上でマッチングするアプリを開発する→アプリ開発の技術者と開発資金を調達する……という形になるだろう。

 組織的活動によって、顧客満足を実現しようとすれば、活動資金が必要であり、事業を運営する社員と組織が必要であり、彼らにその仕事を遂行してもらうために権力が必要となる。人の獲得やお金、権力などは、一般的には手段と考えられるが、実際にはこれらの獲得のためには大きな努力が必要であり、それ自体が十分に達成すべき目的になりうる。中でも大きな組織では、お金を集めたり、人やお金を使う権力を獲得したりするまでは苦難の道のりであり、またそれらの獲得自体が個人にとっては大きな喜びとなりうるため、トップや幹部がそれらの獲得に熱中してしまうことになる。そうなると、本来の目的は忘れ去られ、お金の獲得や権力闘争が組織やその成員の主要な目的となってしまう。