もちろん、それがうまくいくケースも、いかないケースもある。場合によっては組織の目的だって事業ドメインだって変えてしまう。組織の目的などどうでもいいから、それが変わったからといってつらい思いをすることもない。結果さえ(主に売り上げ、利益)出せればいい。こんなふうに言うとひどい人のように聞こえるが、修羅場にはこういう人が必要でもある。ターンアラウンドマネジャー(再生請負人)は、この典型例である。
これらのトップは、成功すると素晴らしい実績を生むが、考えている方向性が時局から外れていると目も当てられない結果となる。したがって、非常時でなければ、少々ブレるくらいがちょうどいいかもしれない。
大変革の時代には
目的の再解釈を柔軟に
さて、本年はおそらく大変革を余儀なくされる一年となるだろう。組織の目的について悩むトップも多くなるはずだ。上記のとおり、組織の目的は、維持し続けるにはかなり脆弱(ぜいじゃく)なものであることがほとんどだ。その割に、社員や顧客は、当初の目的や、理念に不合理な執着を持つことも珍しくない。
大事なことは、歴史的な経緯を踏まえながら、環境に合わせて目的の再解釈や再設定を行い、ステークホルダーを納得させ、周知徹底することである。組織の生き残りがかかっているのだから、それこそネット書店とクラウドストレージサービスの提供は、消費者の情報に対するニーズへの対応という意味では同根である、と言い切るくらいの思い切りや柔軟な解釈をいろいろ試さなければならないだろう。伝統を生かしながら新しい挑戦をするには、上手に旗印を付け替えることが必要である。事態はすでにブレることの当否をうんぬんするような段階ではなく、組織もトップも社員もいや応なく状況に合わせて変わっていかねばならないところまで来ているのだ。
(プリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役 秋山 進、構成/ライター 奥田由意)