3. 事業環境の変化
若年人口が減ってくると、そこに依存していた多くのビジネスが打撃を受ける。たとえば、予備校などは全体としてかなり厳しい状況である。生き残りのため、校舎を貸し出すなどの不動産ビジネスに手を出せば、組織の当初の目的とは違うことを始めることになる。
また、以前から社内決裁のほとんどはオンラインで可能になっていたが、一部にはまだハンコが残っていた。請求書のやり取りも、いまだに郵送が多いが、おいおいなくなっていくだろう。すでに情報技術の発展で本来は不要になっていたものが、コロナ禍のような環境変化によって明らかになり、別のものに取って代わられるのである。旧式のサービスを提供していた企業は新たなサービスに転換することが求められる。
このように環境変化への対応として、提供する商品やサービスが変化することから、最終目的は変わらなかったとしても、通常掲げる組織の目的は大きく影響を受けることになるだろう。
4. 目的間のコンフリクト
組織において、その究極の目的が明確に決まっていることもあるが、実際にはいろいろな目的が混在しており、それらがコンフリクト(対立、あつれき)を起こした場合に、どれを優先すべきかには解釈の余地がある。
創業者は、社会課題を解決することを起業の目的にしたかもしれないが、同時に利益の上がる会社を作って上場し、株価を上げて株主価値を上げたいと思っていたかもしれないし、さらには多数の社員の雇用を創造することを重視したいと思っていたかもしれない。これらの目的に、明確に優先順位(たとえば1に社会問題解決、2番目が株主価値向上、3番目が雇用創造というように)が定められていればいいが、ほとんどの企業において優先順位は決められておらず、並列の記述である。
そうした場合、好況期には目的間のコンフリクトは発生しないが、事業環境が悪くなると、優先順位の付け方が問題になる。人によっては、雇用創造こそが当社の目的だと考えるが、他の人は株価でしょ、などと言って社内に混乱が起こる。選択された基準が社員の多くが考える優先順位と異なると、経営陣は目的をはき違えていると非難されることになる。
5. 目的を理解していない人の登用
組織がそのリーダーや幹部を選ぶ際に、組織目的を深く理解し、その実現を目指すことこそが自分の使命であると認識していればよいが、残念ながらそうでない人を幹部にする人事が行われることも珍しくない。
公明正大なビジネスをすることが会社の理念に掲げられていても、経営幹部に、“お金もうけはうまいが、危ない橋を渡る人”を選択してしまえば、組織目的に合致しない決定が正当化された、というメッセージを社内外に宣言しているようなものである。他に候補者がいない場合に、組織目的に沿わない人事を行うことはままあるが、やってしまうとその人によって組織は本来あってはならない目的に支配されてしまう。