ウーマンラッシュアワー村本大輔──。沖縄の基地問題、原発、朝鮮学校についてなど、おおよそ今まで私たちが見てきた「お笑い」とはまったく違うものを、彼は舞台の上で繰り広げている。そんな彼がさまざまな地で見て、感じた“痛み”をつづったノンフィクション『おれは無関心なあなたを傷つけたい』が刊行された。「テレビに出ずに全国を回って人と話してきたのでそれを本にしました」と語るその本には、「2020年ベストワンの本」「泣きながら笑って読んだ」「この本だけは絶対に読んだほうがいい」と読者から絶賛の声が多数集まっている。今回は本書の刊行を記念して特別インタビューを実施した。村本大輔がすごくダサいと感じている「意識どん底系」とはどんなやつなのか?(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

本当にダサいのは「意識高い系」ではなく「意識どん底系」

──本の中にあった「発言しないのは民主主義の放棄だ。民主主義の木を育てるには、まず土である発言できる空気をつくることだと思う」という言葉が印象的でした。村本さんが考える、発言する空気を妨げているものとは何でしょう。

村本大輔(以下、村本)「他人の目」は大きいんじゃないでしょうか。この前、「THE MANZAI」に出たときの話なんですが、ビートたけしさんとナインティナインさんが横にいたんです。それで、自分のネタをやるときに、僕は後半、熱く叫んで怒りまくるわけですが、あの瞬間、「芸人として恥ずかしい」という思いがチラッと脳裏によぎったんですよ。

 でも、そのあとすぐに「誰の目を気にするんだ?」と思ったんです。日本人が発言できない理由の一つが、こうした他人の目だと思います。辛かったら泣けばいいし、怒り狂いたかったら怒り狂えばいい。怒ることは恥ずかしいことじゃない。怒るときには怒らなきゃいけない。

村本大輔(むらもと・だいすけ)
1980年生まれ。福井県おおい町出身。2008年に中川パラダイスとお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。2013年に漫才コンクール第43回NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIともに優勝。AbemaTV「ABEMA Prime」を通じてニュースに触れ興味を持ち始めたことをきっかけに、原発や沖縄基地問題、朝鮮学校など政治・社会問題を取り上げた漫才をつくり、フジテレビ系「THE MANZAI 2017」で披露。劇場を主な活動の場にしており、積極的に全国で独演会を開催している。2021年2月16日(火)、22日(月)には、東京・大阪にて独演会「Without me~おれを排除してみな? お前たちおれなしじゃこの世界はとてもつまらないだろう」を開催予定。

 で、僕はね、人の目を気にして「怒ることはクールじゃない」って冷笑するのは、すごくダッサい価値観だと思うんですよ。「クールなわけじゃなくて、お前が怖いから近づけないだけだろ」としか思わないわけですよ。

──たしかに、そういう価値観の人も多いように思います。

村本 一つ面白い話があるんです。この間、ある焼き鳥屋に行ったとき、俺が食ってたら大将がね、「村本さん、僕、在日なんですけど、いつも漫才で発信してもらってありがとうございます。在日について発信する芸能人なんてまったく見ないから、本当に嬉しいんですよ」って言ってくれて。

 で、「村本さん、向こうのカウンターにも在日の同胞が来てて、『村本さんにどうしてもお礼が言いたい』って言ってるんですけど」って。そうしたらその人が来て、「僕たちマイノリティがいかに心細いか……。でも、日本人でこうやって接してくれる方がいて、本当に嬉しいんです」みたいに、泣きそうになりながらお礼を言ってくれるわけです。

 それに気づいたほかのお客さんが、「えっ? 村本さん?」ってなって、「私たちも在日なんです」って言ってきて。そこ、在日が集まる居酒屋だったんですね。蓋を開けてみたら、もう僕以外ほぼ全員が在日で、僕のほうがマイノリティだったっていう。「いや俺が一番マイノリティなんかい!」って思って(笑)。

──(笑)

村本 そこに、大学生くらいかな、イケメンのやつと、ちょいブス男みたいな二人組がいたんですよ。で、ちょいブス男のほうが在日で、「3年前のTHE MANZAIでやってた伝説の漫才、震えました。家族で見てて、泣きました。笑って泣くって初めての経験でした」と言ってくれて、「うわぁ、嬉しい!」と思ったときに、横にいたイケメンのやつが「お前、熱いなあ」って言ったんですよ。

 じつはイケメンのほうは、日本人だったんですよね。ちょいブス男のほうは「熱くて何が悪いんだよ。だって、俺は本当に嬉しかったんだよ」って言い返してたんだけど。

 僕が思ったのは、ああ、この「お前、熱いなあ」っていう一言って、とても日本人っぽいなあって。

 でも冷静に考えたら、その冷ややかな「熱いなあ」って、自分の心がただ動かないだけじゃないですか。

 まるで「冷めてることがいいこと」みたいになってるけど、お前の心が不感症な環境で生まれ育っただけじゃねえのかって思っちゃうんですよね。単に、お前が「意識どん底系」人間なだけやろと思うんです。

――「意識どん底系」(笑)。

村本 一生懸命に「今の世界がおかしいぞ、問題があるぞ、なんとかしなきゃ」って、問題意識を持っているやつを「意識高い」って言い方で呼んで、「こっちが普通であっちがヤバいやつ」ということにして、自分たちは守りに入る。「いつまでそんな恥ずかしい生き方するんだ?」と思いますよ。

──そういうスタンスを取ることで自分を守ろうとしているのかもしれません。

村本 その人たちに伝えてあげたいですよね。人間味を消して、部品になって、社会を動かすネジになっていっていいのか。社会の中でうまいことやるためにどんどん「部品化」していってる自分自身でいいのか、と。人間たるもの、怒るときは怒って、泣くときは泣くべきだと思いますよ。

【大好評連載】
第1回 だから僕は、社会問題をネタに漫才をする、本を書く
第2回 政治や社会問題を「重たい」と避けている不感症なあなたへ