トランプ大統領支持者による連邦議会議事堂占拠事件の衝撃が冷めやらぬ米国で、いよいよバイデン新政権が誕生する。民主主義の象徴である議事堂で犠牲者が出るほどの熾烈な分断が起きる中、超党派による政策運営の夢を見続けるバイデン氏の「鈍感力」が試される。(みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長 安井明彦)
「選挙」より「占拠」
対立激化でかすむトリプル・ブルー
1月20日に行われるバイデン新大統領の就任式に向け、米国の首都ワシントンは厳戒態勢に入った。1月6日の連邦議会議事堂占拠事件に続き、さらなる暴動のリスクがあるからだ。
トランプ大統領は1月11日にワシントンに非常事態宣言を発令、就任式に向けて 1万人を超える州兵の動員が見込まれる。連邦捜査局(FBI)は、ワシントンのみならず、全米50州の州都で、武装した抗議運動の可能性に警鐘を鳴らす。ただでさえコロナ禍で祝賀モードが薄れ気味な就任式は、異様な緊張の中で執り行われようとしている。
議事堂占拠事件の衝撃に、バイデン氏と民主党が達成した大統領・議会上下両院多数派の完全勝利(トリプル・ブルー)も、すっかり霞んでしまった。1月5日にジョージア州で行われた上院2議席の決選投票では、いずれも民主党の新人候補が共和党の現職議員を下した。定数100人の上院の勢力図は、共和党50議席、民主党50議席で並び、副大統領となるハリス氏の1票で、民主党が多数派を獲得する運びとなった。
トリプル・ブルーの実現は、大きな注目を集めてよいはずだ。何しろ、2000年を最後に民主党が上院選挙で勝っていないジョージア州で、2議席を総取りしての多数派実現である。そのうち1議席は、11月3日の本選挙で共和党の現職が多数の票を獲得しており、得票率が50%を超えないと当選できないジョージア州特有のルールがなければ、決選投票での民主党の逆転はあり得なかった。また、もう1議席については南部ジョージア州で初の黒人上院議員の誕生となり、歴史に残る出来事となった。