上場会社の経営者は、
ROEを高めることに腐心している
林教授 株主は将来儲かると思うからお金を投資する。
カノン 当たり前ですよね。
林教授 それを判断する指標がROEなんだよ。つまり、ROEが高くなると考えれば、投資家は資金を投資する。
カノン ROEが上昇するという意味は、自己資本に対して税引き後当期純利益が増えることですか?
林教授 そうだね。利益が増えれば配当も増えるし、株価も上がる。そこで、投資家はその会社の株を買う。すると株価はますます上昇する。
カノン 配当金をもらって、株価が上昇したタイミングで売れば、投資家は儲かるわけですから、笑いが止まりませんね。
林教授 逆に、ROEが下がれば株価が落ちて配当も少なくなるから、株主はサッと手を引く。
カノン だから、上場会社の経営者は、ROEを高めることに腐心しているんだ。でも、ちょっと待ってください。経営者の能力はROEではなくて、ROAで見分けるのではなかったのでは?
林教授 そこなんだよ。会社にとって有能な経営者でも、投資家にとって有能とは限らないんだ。
カノン どういう意味ですか?
林教授 株主の関心はROEであって、ROAではないということだ。
カノン ややこしいですね。
林教授 会社経営にとって大切な指標はROAであることは説明した。だが、株主は自分の利益を考えて行動する。つまり投資した資金の利回りを考えて行動している。たしかに会社経営にとってROAは重要だとしても、ROEが低ければ投資家にはなんの魅力もないんだ。
カノン 頭が混乱してきました!
林教授 すぐにわかることだ。
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。