有効な解決策となる
事業再生ファンドの活用

 以上の理由により、銀行が自分自身で債務免除やDESを行うことは極めてハードルが高いと言わざるを得ない。

 その場合、有効な解決策となるのが事業再生ファンドの活用である。事業再生ファンドは、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)の一類型であり、主に不良債権を買い取って、DESやDPOはもちろん、必要に応じて増資や事業譲渡・会社分割スキームなどをフル活用して企業を再生させるファンドのことだ。筆者を含め、2000年代前半には多くの場面で活用されたが、その後の景気回復と自己査定基準の緩和などの結果、事業再生を専門とするPEファンドは少なくなっている。

 事業再生ファンドは、多くの場合、銀行などから貸付債権を時価で買い取る(時価とは、その融資先の将来キャッシュフローと担保処分価値を現在価値に引き直したもの)。その後、債権者は銀行からファンドに移り、ファンドは債務者と話し合いながら、現実的な弁済計画を立ててモニタリングし、毎年の利益や資産処分によるキャッシュフロー、あるいはリファイナンス(借り換え)等によって弁済額が一定の額に達したら債務免除をする(DPO)か、または、買い取った貸付債権を株式に転換(DES)し、経営権を握って経営改善を図ることになる。もちろん、必要があれば不採算事業の切り離しのための会社分割や事業譲渡も行い、増資にも応じる。会社分割や事業譲渡、あるいは増資などは、銀行にはできないスキームである。

 事業再生ファンドが介在することによって、企業の過剰債務問題はスムーズに解決できることが多い。また、銀行にとっても問題点が少ない。

 先に述べた融資先の選別の問題では、銀行は事業再ファンドに貸付債権を売却した時点で債権者ではなくなるため、その後の債権放棄、DPO、DESなどはファンドの側が判断することになるため、銀行が融資先の選別をすることにはならない。

 また、経営者保証の問題だが、事業再生ファンドが貸付債権を買い取る場合の時価には、原則として経営者の個人財産の処分見込み額を含まないことが多い。そもそもそれをした時点で事業の再生は不可能だからだ。よって、事業再生ファンドに債権が譲渡された時点で、経営者は銀行に対する保証履行の問題から一旦解放される。

 銀行が融資先の株式を取得する結果として経営責任が生じる問題についても、事業再生ファンドが一旦銀行から貸付債権を買い取った後にDESをして株主になる場合には問題にならない。税務上も、銀行は貸付債権を売却した時点で、債権売却損として損金に算入しやすくなる。