アパレル大手「アダストリア」が健保脱退で卸問屋と対立、驚きの理由とは「ニコアンド」や「グローバルワーク」など、さまざまなファッションブランドを展開するアダストリアが東京ニットファッション健康保険組合から脱退できずにいる Photo:Diamond

「ニコアンド」や「グローバルワーク」など、さまざまなファッションブランドを展開し、グループで約9000人の従業員を擁する東証1部アダストリア(会長兼社長・福田三千男)が2017年頃、自社健保を設立するため、加入している総合型健康保険組合「東京ニットファッション健康保険組合」(理事長・宮入正英、以下KF健保)に脱退を申し出たところ、同健保から反対に遭い、3年間以上にわたり不本意な形で、脱退が拒否し続けられていることが分かった。背景を探ると、寂れゆく衣料品問屋が成長分野のアパレル小売業に目をつけ、若者を中心としたアパレル店員の保険料を利権化している構図が浮かび上がった。(フリーライター 村上 力)

医療保険制度の一つである
健康保険組合とは

 そもそも健康保険組合は医療保険制度の一つだ。病気やケガなどをしたときに、医療費の自己負担を約3割に抑え、残りを保険料や税金で賄うのが現在の保険制度であるが、保険料を納める先が、働いている職場などによって違う。自営業やアルバイト、無職の人は国民健康保険。勤め人の場合は会社が指定する健康保険組合。健保がない中小企業に勤めている人は、全国健康保険協会、通称協会けんぽに加入する仕組みとなっている。

 健康保険組合の場合、保険料は会社と従業員の折半で、勤め先会社の社員だけが入る単一健保と、地域や産業で取りまとめた総合型健保に大別される。単一健保を設けているのは往々にして大手企業だ。健保組合は集めた保険料で、保険事業だけでなく、定期健診や保養所の運営など、会社や業態のニーズに合わせた福利厚生サービスを提供している。