新型コロナウイルス感染が再び拡大し、1月には2回目の緊急事態宣言が発令された。対面でのコミュニケーションを懐かしむ人もいる一方、オンライン化で便利になった部分があることは否めない。マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、現在は複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は「今後ワクチンの供給が進み、コロナ禍が収束した暁には、オンラインと対面、リアルタイムと非同期の両方の良さを体験に取り入れる『ハイブリッド化』が進むだろう」と予測する。
オンライン化と同時に
イベントの非同期化も進んだ2020年
2020年は新型コロナウイルスの影響で、仕事や打ち合わせ、イベントなど、これまでリアルスペースで行われてきた、あらゆることの場がオンラインに移行した年でした。
私を含む有志によって毎年開催してきたイベント「プロダクトマネージャーカンファレンス」も、従来はリアルな場で開催されていましたが、5年目を迎えた2020年はオンラインでの開催となりました。
プロダクトマネジメントに携わる人々が情報や意見を交換する場として、プロダクトマネージャーカンファレンスは、2019年には1200人以上が参加する規模に拡大していました。海外からも著名なコンサルタントやITサービス企業(例えばビデオ会議システム「Zoom」など)の幹部を東京・渋谷に招き、スピーカーとして登壇してもらいました。
しかし渡航も移動も難しくなった状況では、リアルの場にスピーカーを招くことは不可能になりました。一方で、オンラインとなったことで、むしろ、やりやすくなった面もあります。
まず、オンラインイベントであれば、スピーカーだけでなく、参加者も会場に足を運ばなくても参加できます。渡航費や宿泊費などの負担、移動時間などをかけずに済むため、海外のスピーカーには例年より多くの人へ声をかけ、登壇が実現しました。
また、セッションはZoomなどのシステムを使って配信したのですが、「必ずしもリアルタイムでなくてもいい」という状況が生まれました。聞き手にとっては、登壇者と同期しているかどうかはあまり重要ではありません。しかも事前録画の方が、講演のクオリティが上がるケースもあります。