「記憶力」と「集中力」を損なう
スマホによる情報のインプット

 では、こうしてスマホをしょっちゅう触る習慣が「記憶力」や「集中力」に影響するとは、どういうことか。

 人間の脳は、情報を受け取ると、まず「作業記憶(ワーキングメモリー)」として一時保存する。その作業記憶を、睡眠中などに整理して「長期記憶」として定着させる。これが人間の大まかな記憶のメカニズムだ。

 スマホを触っているとき、私たちは、じっくりと長い時間をかけて一つの情報や知識を仕入れることをしないだろう。ブラウザのページを短い間隔でめくり、インスタグラムやチャット、ツイート、メール、ニュース速報、フェイスブックの書き込みを次々とチェックするのが普通だ。

 ところが、このように短い間隔で大量の情報をインプットしていくと、作業記憶のスペースが足りなくなってしまうのだ。作業記憶に入らなければ、長期記憶に残ることもない。こうして「なんだか物覚えが悪い」という状態に陥ることになる。

「集中力」についてはどうか。次から次へと情報のインプットを切り替えていくのは、複数のことを同時に行う「マルチタスク」と変わらない。というより、人は実は複数のことを同時に行うことはできず、マルチタスクといえども、実際には1つ1つの作業をめまぐるしく切り替えて行っているのである。

 マルチタスクでは、複数の作業を切り替えるのに、ある程度の時間がかかることが、実験でわかっている。1つの作業に集中し、別のことに集中を切り替え、再び元の作業に戻ったときに、同じ効率で作業ができるまでに時間がかかるというのだ。このように脳が効率よく働かなくなり、結果として集中力が劣えることになる。

 そんなに効率が落ちるものなら、次から次へと情報を求めるのをやめればいいと思うかもしれない。だが、そうはいかない。なぜなら、先述のように「ドーパミン」が放出されるからだ。1日に何百回もドーパミンを放出してくれるスマホを、私たちは手放せなくなっているのだ。