大相撲序二段の琴貫鐵が日本相撲協会から「コロナが怖いで休場は無理だ」と言われ、「出るか辞めるか」を迫られ引退した。一力士が声を上げたことには意味がある。企業や団体における感染防止対策に懸念があれば声を上げることが大事だ。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

認められなかった「休場申請」

「コロナが怖くて休場」を認めず、相撲協会の理屈は企業でも通用するかPhoto:PIXTA

 大相撲佐渡ケ嶽部屋の序二段力士、琴貫鐵が1月場所を前に引退した。「このコロナの中、両国まで行き相撲を取るのはさすがに怖いので、休場したいと佐渡ケ嶽親方に伝え連絡してもらった」というが、日本相撲協会からは「コロナが怖いで休場は無理だ」と言われ、「出るか辞めるかの選択」を迫られたという。

 これに対して、日本相撲協会の芝田山広報部長は、「会社にもコロナが怖いから出社したくないっていう人もいるだろう。それをみんなが言っていたら仕事にならない。そのために協会は安全対策を取ってきた。それに対応できないなら本人が出処進退を考えるしかない」と突き放し、「理屈が通らないでしょ、『コロナが怖いから休場させて』では」と語っていると報じられている。

 確かに企業にも、感染防止のために休みたいという社員がいるに違いない。その場合、その社員から有給休暇を取得できる日数の範囲内で取得の申し出があれば、企業は取得時期の相談はするかもしれないが、有給休暇を与えなければならないことが、労働基準法で定められている。

 加えて、「休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である」という判例もあり、有給休暇取得の申請に、理由はいらない。芝田山広報部長が言う「理屈が通らないでしょ、『コロナが怖いから休場させて』では」という考え方は、企業には当てはまらない。

 有給休暇の残日数がなければ、無休の休暇を取得する方法もある。有給であっても、無給であっても、休暇申請をした際に、企業が「出るか辞めるかの選択」を迫ったら、退職強要になることは明白で、明らかに違法行為だ。社員は退職勧奨にも退職強要にも従う必要はない。