懸念の声に耳を傾けて対処する

 私が行っている能力開発プログラムにおいては、昨年2月以降、対面での実施を、ほぼ全面的にZoomでの双方向演習に切り替えて実施するようになった。常時カメラとマイクをオンにして参加いただき、対面に比べて遜色ないプログラムを実施できている。

 新型コロナウイルス第1波が収まった頃には、一部の企業で、参加者同士の距離を十分確保するなど感染防止対策を取っていただき、対面の実施を一時的に再開したが、第2波、第3波に直面して以降、Zoomでの実施に戻っている。

 数カ月前、感染拡大の第2波が収まった頃だが、今回緊急事態宣言の追加対象となった都市の商工会議所からセミナー実施の依頼があり、2月に対面で実施することをいったん予定していた。

 その後、実施依頼を受けた時期に比べると感染者は10倍以上に増え、その都市も緊急事態宣言の対象になる状況になってきたので、参加者の募集を開始する前に、その商工会議所の担当者に、対面実施の中止か、延期か、Zoom実施への切り替えか、どのように計画しているか聞いてみた。

 すると、担当者からは、「配席や換気等の感染拡大防止策を取っているので、対面で開催する」「国などから指示が出た場合は別だが、現状は予定通り対面での実施」との返答が示された。今回の緊急事態宣言における制限には数十人のイベント自粛は含まれていないし、移動自粛も要請されていない。担当者の見解は、間違いとはいえない。

 しかし私からは、配席や換気などの配慮をしたとしても4時間にわたり数十人が同一会場に集まることや、参加者の移動による感染拡大リスクに鑑み、リモートでの実施を提案した。すると担当者は、すぐにリモートに切り替えて実施することを決めてくださった。これまで国などから指示がない限り対面での実施の方針だった担当者が、懸念のひと声を真摯に受け止めてくださり、即座に対応してくださったのだ。

 一力士だろうが、一社員だろうが、一取引先だろうが、感染拡大防止の観点から懸念や気になることがあれば、声を出すことが大事だ。その声に対して、この担当者のように耳を傾けて対応策を考えることが必要だ。日本相撲協会のように、「出るか辞めるか」の選択を迫るような対応は言語道断である。