個別の「申し出」にどう対応するか

 企業が感染防止策を十分に取っていて、政府が要請している在宅7割の水準も徹底していたとしよう。社員が7割を上回って在宅勤務を実施したいと相談してきた場合、それに対して「出るか辞めるか」を迫ったら大問題だ。

 本人が感染を心配していて、それを払拭できないようだったら、在宅を認めればよい。仮に在宅勤務の日数が増えることによって、本人のパフォーマンスが低下するようだったら、在宅か出勤かによらずに、パフォーマンスの結果によって、査定すればよいだけのことだ。逆に在宅勤務の日数が増えることによって、本人のパフォーマンスが上がることもあり、その場合は、査定にプラスに影響する可能性もある。

 琴貫鐵は休場することで、場所手当を放棄し、勝ち星に応じて受け取ることができる奨励金を受け取る権利も放棄して、番付が下がることも承知の上で、休場を申請している。十分に対価を払って申し出ていることに、「出るか辞めるか」以外の方策を考えられなかったのだろうか。評価が下がる可能性がある、昇給や賞与や昇格に影響する可能性があることを承知した上で申し出ていることに対して、真摯に対応していないこと自体が問題だ。

 また、こうした申し出に対して秘密裏に対処しようとするのはやめた方がよい。例えば、「在宅勤務の割合は7割を目安とするが、それ以上に取得した場合には、相談に応じるので申し出るように」という意味のアナウンスをオープンにしておくことがお勧めだ。

 このように申し上げると、「本人の希望に従っていたら、出社する社員がいなくなる」と、芝田山広報部長の「みんなが言っていたら仕事にならない」という見解と同じことを言う人がいる。しかし、よく考えてほしい。

 比較的短時間であまり密にならない状況で通勤できる人や、在宅勤務の環境とオフィスの環境を比べてオフィスの方が仕事がしやすい環境だという人の中には、通勤したいという人もいるかもしれない。逆に、在宅勤務の方がベターだと思う人もいるかもしれない。確かに、1000人いれば1000人の個別の希望を聞いて対応することは不可能である。

 しかし、一定の基準を設けた上で、十分な対価を支払い、不利益を承知の上で希望していることであれば、その対価と引き換えに休務したり在宅勤務したりするという個別取り扱いをできる範囲ですればよい。力士にせよ、社員にせよ、個別の希望を最大限に満たす取り扱いをして、希望が満たされた総量を増やすことが、組織全体のパフォーマンスを向上させることにつながる。