件数で見ると、多い年は4万件を超えることもある。不正受給1件に受給者1人が対応しているとすると、「2%は不正受給をしている」と言えるかもしれないが、「同じ人が1年間に20回」ということもあり得るため、実態は不明だ。

 いずれにしても、金額でも人数でも「全体ではおおむね適正」と見るのが妥当であろう。このような事柄は、生活保護について一定の下調べを行っている報道関係者、そして生活保護の研究者の間では、常識以前である。

 しかし、ラジオ放送に耳を傾けている聴取者のほとんどは、一定の予備知識を期待される報道関係者や研究者ではない。メディアは時に、「生活保護の不正受給は実は少なくて、そこばかり問題にしていると公務員の人件費が増えて、納税者が損をするだけ」というメッセージも発しているのだが、多くの場合は「〇年の生活保護不正受給は△件、金額は□億円」と淡々と報道するだけだ。そのとき、「□億円」は総額の何%に当たるのか。瞬時に概算で暗算して「今年も0.5%くらいか、平年並みだな」と判断する筆者は、少数派中の少数派であろう。

 筆者は自分の出番を、「必要なら心配なく利用でき、贅沢ではなくても心豊かに暮らせる生活保護に」「『最後のセーフティネット』の出番がありすぎる状況は問題なので、『最後』の手前にある雇用と公的保険の充実を」と締めくくった。

就労促進による課題解決は
本当に有効なのか

 最後に、コメンテーターの前衆議院議員・金子恵美氏から、筆者は3点の質問を受けた。

 1点目は、公的保険の充実に関する具体案であった。少なくとも、低所得層に対する健康保険料や年金保険料があまりにも重い負担となっているため、「働いているのに生活保護より苦しい生活」という状況が実際に存在することは問題である。