自分を愛してくれる人とだけ
付き合ってはいけないの?

岸田:私自身の問題だと思っていました。本当に突出した才能があって、それを自分で信じられるような天才だったら、自分ができないことを気にせず、デコボコな自分を受け入れられると思うんです。

 でも私は波風立てたくないタイプで、周りの目を気にしてしまうから、つらいんです。私が突発対応している間にシワ寄せがきている後輩たちがつらそうなのが申し訳なくて。全然会社員に向かない私を拾ってくれた垣内さんには、感謝しています。

川原:すごく価値は生んでいたはずだけれど、会社の期待にうまく応えられない自分にモヤモヤしていたんですね。

岸田:そうですね。で、妖精の登場でいうと、そのあとに糸井重里さんや前澤友作さん、佐渡島庸平さんという「ヤバビッグ3」が続いて、その後にカメラマンの幡野広志さんや別所隆弘さんという「ヤバミドル2」が登場しました(詳細は岸田さんの著書『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』をお読みください)。

 なぜか全員男性で、世の中的には変な人だけれど、揺るぎない美意識を持っている人たちから「おもしろい」と言ってもらえた。もしかしたら、死んだおとんが連れてきてくれたのかなぁと思ったり。

川原:ピンと来るんでしょうね。きっと心から岸田奈美という人間に魅力を感じて、応援したいと思っている人たちですよ。

岸田:相手が本当に自分を好きで動いてくれているのか、自分の利益を計算して動いているのかって、直感で分かりますよね。

川原:分かります。

岸田:昔、元彼から「お前は自分を愛してくれる相手じゃないと興味持てない自己中心なやつだ」と言われて、「え、それじゃダメなの?」ってビックリしたことがあるんです。自分を愛してくれる人とだけ付き合ってはいけないの?って。

 たしかに、周りを見渡してみると“ほめられることへの罪悪感”を抱いている人ってすごく多いんですよね。我慢してつらい場所にいるほうが美しいし、えらいと思っている価値観。どうしてなんでしょうね?

川原:きっと妬みがこんがらがっているのでは?

岸田:「自己肯定感を高めて、自分を好きになりましょう」と言われ始めたのも、ごく最近のことですよね。

川原:「自分が好きな人=空気読めない人」みたいなネガティブなニュアンスがありましたよね、以前は。

岸田:そうそう。自分に自信を持ったり、ほめられる人の近くに行ったりすることはダメなことなんだと、私もずっと思っていました。「私はベンチャー企業にいて、母と弟のために頑張らないといけないし、若いから舐められないように、きついことも進んでやらなきゃ」と自分を追い込んでいたんです。

川原:そういう人、多いんだろうな。もっと早く本を出すべきでした。(対談の続きは2021年2月12日公開予定)