しかし、コロナにより人の移動が停滞した一方で、物の移動は活発化している。中期経営計画の見直しで「地域共生の深耕と新たな価値創造」を打ち出しているように、アフターコロナを見据えて、時代の変化に合わせた新しい価値を社会に提供すること、併せて地域の活性化に貢献すること、この二つを目的として検討が本格化した。3番目に収益事業化を考えている。

新幹線輸送の
二つの強み

――新幹線輸送の強みは?

 速達性と定時性だ。またJR西日本の新幹線は、山陽新幹線はJR東海とJR九州、北陸新幹線はJR東日本と直通運転を行っており、ネットワーク力も強みだ。さらに在来線ネットワークとの結節もあり、これを物流においても社会インフラとして改めて提供できるのではないかと考えている。

 また災害で道路が寸断された際に、トラックから新幹線に積み替えて、緊急避難的な輸送路として活用できないかと考えている物流事業者もあるようだ。

――荷物輸送に対するニーズを感じていたのか?

 コロナ前は収益事業化を念頭に単価の高い物のニーズを探っていたが、トラックや航空貨物など物流ネットワークの速達性、定時性は相当、充実してきており、なかなか見つからなかった。転換点となったのは、昨年の緊急事態宣言の際にタクシーが貨物輸送を始めたことだった。物流業者が逼迫(ひっぱく)している中で、社会的にも大きなインパクトがあったと思う。

 外からのニーズに応えるというより、内部から社会に貢献できないかという声が上がってきたことから、去年の夏頃から検討を始めた。

 まずは九州新幹線との相互直通運転10周年を記念して、JR西日本グループが経営するホテルグランヴィア大阪、ホテルグランヴィア京都で開催するイベント向けに、鹿児島の魚を新幹線で輸送する計画だ。今回のイベントで終わりではなく、これをきっかけに事業化につなげるための相談を物流事業者と進めている。

――グループ全体としての価値向上が狙いか?

 価値は収益だけではない。世の中に新しいサービスを提供したいという思いがある。他企業や地域と連携することで、今までになかったインフラとして活用してもらえるようになりたい。

 例えば鹿児島で朝採れ、朝締めされたカンパチを大阪で口にするということは、今までのインフラの在り方だとありえなかった。航空貨物でも前後のリードタイムがあり、それほど便も多くない。トラックでは距離がありすぎて運転手ひとりで運べず、フェリー輸送が主流のため時間がかかる。それに対して新幹線では4時間弱で運べる。新しいサービスの提供が可能になる。

 あるいは、九州で採れたイチゴを新幹線で大阪にもってくる。そのイチゴを使い、ホテルグランヴィア大阪の世界的パティシエがケーキを作り、新幹線で九州に送り返す。このようなこともできるのではないかと検討している。

――荷物輸送には想像以上に可能性がありそうだ。

 今回、新型コロナをきっかけに「共創価値」という言葉が随分出てくるようになった。ここまで時代の変化が大きいと、共創できる価値というものがさらに見えてくると思う。コロナ禍は不幸なことではあるが、これをきっかけに明るい話題、新しい価値を提供し、社会に貢献できるのではないかと考えている。