森氏は東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の会長であり、元首相という立場にあり、今なお、強い権力を持っているとみなされる人物であっても、一人の83歳の人間です。そんな老人の失言を、鬼の首を取ったかのように攻撃するのは人道的にいかがでしょうか。

「森氏は国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長とも関係が深いし、それに政治力もある。今回の問題発言を撤回しているし、大目に見てオリンピックの成功に向けて努力をしてもらい、結果で償ってもらおうじゃないか」という寛容さは皆無です。何が何でも徹底的につぶしてやらなければ気が済まない、そういう狂気の渦に日本国民全員が巻き込まれているような状況だと私は感じています。

 これは日本が今、侵されている病です。一億総攻撃病です。今回の症状は「一億森喜朗バッシング」病です。新型コロナに侵食されているだけではなく、それ以上にこの病は蔓延(まんえん)していて深刻であるように感じます。

オリンピック開催の可否は
冷静に議論すべき

 そして、今回の問題で一番違和感を覚えたのは「こんな会長の下でのオリンピックなら中止すべきだ!」という論調があることです。

 そもそもオリンピック開催の可否の議論は、新型コロナの感染拡大が原因であり、女性蔑視の問題とは無関係です。新型コロナの影響によって延期され、感染防止策を徹底させることによって何とか開催しようという機運の中で頑張ってきたのではないでしょうか。

 にもかかわらず、森氏への感情に思考を奪われ、新型コロナ問題とジェンダー問題を混同し、オリンピック中止を主張するのは冷静さを欠いていると言わざるを得ません。

 オリンピックの参加選手たちの姿は、新型コロナに苦しむ世界中の多くの人々に勇気と元気と感動を与えてくれるでしょう。

 一刻も早く、日本国民が冷静さを取り戻し、女性蔑視発言の問題に終止符が打たれ、生涯を懸けた戦いをしている選手たちのためにもオリンピックが開催されることを心から願っています。