――新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化で、企業の中には人員の縮小を進めるところも増えそうです。企業が社労士に相談することは今年増えそうですね。
すでに水面下では、組織の縮小や早期退職制度に関する企業からの相談が増えていると聞いています。
そもそもここ数年、企業の社労士への相談ニーズは増えています。というのも、労務問題の種類がどんどん増えていますよね。これは緩やかに衰退している日本の社会において、必然だと思います。
昔は経済も成長していて、社会には希望がありました。しかし、今は昔のように企業が成長して、組織が大きくなってポストが増え、それに伴って出世するということが望めない。給料もそう簡単に上がりません。
実力主義の社会になじめない人も出てきて、昔は我慢できたことも我慢できなくなり、どんどん不満が出てくる。パワハラや職場のいじめ、メンタルヘルスの問題など、新しい労務問題が続出しているのはそういった背景もあると思います。
専門分野に詳しいだけでは駄目
経営の理解と長期的視点が必須
――司法書士はどうでしょうか。司法書士というと、過払い金返還請求に躍起になっているというイメージもあります。
過払い金については、この10年でやり尽くした感じがありますよね。もうほとんどニーズはないのではないでしょうか。

司法書士は基本的には不動産や会社登記、相続などの業務を行います。ただし、それだけでは司法書士としての特徴が出ません。
最近耳にするのが、創業期の若い企業に対する支援ができる司法書士が求められているということです。登記だけではなく、会社法をしっかり知った上でコンサルティングができる司法書士です。ストックオプション制度に関するアドバイスや簡単な契約書のチェックなどを一手に引き受けて顧問契約を増やしている司法書士もいるようです。
やはりここでも、顧客の経営状況を理解して、長期的な視点で提案できることが、企業にとって役立つ士業であるかどうかのポイントです。
士業はそれぞれの得意分野、弁護士なら法律、税理士なら税金だけを知っているという人では駄目だということです。