実際、経済産業省では中小企業向けのさまざまな補助金があって、税理士や行政書士などが申請を支援するケースが多いですが、採択されなければ資金は得られません。

 企業から補助金などの資金調達について聞かれれば答えられますし、手続きもやろうと思えばできる人がほとんどなのですが。

――付き合うべき税理士の条件は、どのようなものが考えられますか?

 税理士は基本的に「過去会計」を見る人です。すでに締まった期の決算をまとめて、税務申告書を作成することが本業ですから。

 できる税理士は、この過去会計に加えて、未来会計の目も持っている人です。先に話したように、税理士は多くの中小企業にとって最も身近な会計の専門家です。先々を見通して、「数カ月後には資金繰りが苦しくなるから、今の黒字決算のうちに資金調達しておきましょう」というような提案ができる人がいいですね。

労働問題が多様化は必然
社労士が活躍する場は増える

――そうした提案力については、他の士業についてもいえるのでしょうか。

 社会保険労務士についても、企業に対して現実的で、早い解決が望める提案ができるかどうかが重要です。

 例えば、勤務態度に問題があったり社内のルールを守らなかったりする問題社員がいたとしましょう。企業は、その社員を穏便になるべく早くに退職させたいと思って、社労士に相談します。

 典型的な社労士の提案は、継続的にその社員に対して改善を促す指導をして、その記録をつくる。そして、改善が見られなかったら減給したり配置転換をしたりして、その社員の様子を見ましょうという内容でしょう。

 しかし、そんなことしていたら、同じ職場の優秀な社員が辞めてしまったり、問題社員の改善を待つ間に業績が悪化したり、弊害が大きい。

 できる社労士ならば、典型的な提案に加えて、すぐに退職勧奨に踏み切りましょうという提案もするはずです。再就職のための支援金の制度がないのであれば、そういう制度をつくって、ある程度の資金を渡したりして、双方合意の上で退職してもらうなどの提案もあっていいはずです。

 もちろん違法になってはいけませんので、慎重に進める必要があります。ただ、その社労士が長期的な視点を持っていれば、問題社員がこの先1年以上在籍して、会社にマイナスの影響を与えるリスクと、資金を渡して合意の上で退職してもらう方法の、どちらが顧客企業にとって最善かを考えるはずです。